【識者の視点】ザックJ初期を想起させる森保Jの上昇ムード。問題は所属チームの格が上がった時だ

2018年11月17日 加部 究

ザックジャパンもアルゼンチンを撃破し華々しい船出を見せたがW杯の結末は…

ザックジャパン時代と同様に、森保ジャパンも好調な滑り出しを見せたが、過去を顧みれば4年後の成功が約束されているわけではないことは明らかだ。(C) SOCCER DIGEST

 チームを取り巻く上昇ムードが8年前を想起させる。南アフリカ・ワールドカップでベスト16に進出した日本代表には、アルベルト・ザッケローニ監督が着任。初陣の相手は、今年対戦したベルギーやウルグアイと同等以上にスターを揃えたアルゼンチンだった。スタメンのメッシやテベスはもちろんだが、交代出場した顔ぶれもディ・マリア、イグアイン、ラベッシ……と強烈だった。
 
 だが日本の芽吹いたメンバーの勢いが上回り1-0で勝利。ワールドカップ出場を逃した香川真司がドルトムントで大ブレイクし、本田圭佑はCSKAに移籍。長友佑都は「世界一のサイドバックを目指して」イタリアへ飛び、内田篤人もシャルケと契約を交わしたばかりだった。長友がインテルに移籍するのは未来のことだが、他の3人はすでに欧州でも有数の名門で信頼を勝ち取っていた。それからブラジル・ワールドカップ最終予選途中までは、おそらく歴代最高のパフォーマンスを維持した。年明けにはアジアカップを制し、夏は札幌でライバルの韓国を3-0と一蹴している。
 
 ところが肝心のワールドカップでの結末は周知の通りだ。メンバーを固定したザッケローニ采配もマンネリを生んだが、中心選手たちのコンディションも低下した。香川はマンチェスター・ユナイテッドへの移籍で躓き、ミランで10番をつけた本田は出番を失っていくのだ。
 
 森保一監督が就任してからの4戦は、ほぼ申し分がない。欧州でも嘱望される若いタレントが攻撃を牽引し、ロシア・ワールドカップから見事な新陳代謝にも成功した。しかし今輝いている彼らの未来は、一世代前の香川、本田、内田ら以上に未知数だ。引く手あまたの中島翔也は、飛躍的に評価を高めたからこそ、新天地では一気に期待の視線が集まり重責がかかる。ヘーレンフェーンのエースとなった堂安律も、今後はオランダから、さらには欧州のビッグクラブへと、まだまだ越えて行くべきハードルが連なる。そこで指揮官の真価が問われるのは、中心選手たちが荒波で戦う状況を見極めた上での選考のバランスになる。

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