川崎連覇と残留争いの混沌――個のスキル格差が消滅するなか明暗を分けるのは「哲学」だ!

2018年11月14日 加部 究

J2レベルまで、ピッチに立つ選手たちの基本的なテクニックに大きな格差は消えている

J1リーグ連覇を達成した川崎の安定感は際立っていた。写真:徳原隆元

 派手な連勝や連敗が目立つシーズンだった。絶好調と泥沼の明白なコントラストが点在し、だからこそ川崎の安定ぶりが際立った。
 
 例えば、もし2シーズン制で行なわれていたと想定すると、後期は残り2試合で川崎、鹿島、G大阪の3チームが同勝点で首位。さらに緊迫のレース展開が続くことになる。前期3位の川崎に対し、鹿島は10位、G大阪は18位と低迷していたから、後半戦の建て直しが顕著だ。一方で前期独走した広島は、後期に入り優勝がちらつき始めると16位と急降下。前期2位のFC東京も後期は13位と失速している。名古屋は夏の爆買いで前期最下位から後期5位と巻き返したが、イニエスタ獲得の神戸と、フェルナンド・トーレスを迎えた鳥栖は、観客動員とは裏腹に成績は下降している。集客(夢)が先か、結果(現実)優先なのか、資金の有効利用も含めて考えさせるテーマを提供した。またルヴァンカップを制した湘南が終盤まで降格ゾーンから脱却し切れず、昨年4位の柏が崖っぷちに立たされている状況を見ても、継続的な安定を手に入れているチームは少ない。こうして見ても、改めてシーズンを通して大崩れがなかった川崎が頂点に立つのは、当然の帰結だった。
 
 ただし乱世は、必ずしもネガティブな要素ばかりで演出されているわけではない。J創設25年間の歴史を経て、底辺の拡大と底上げは着実に進んでいる。結果的には大方の予想通りにJ1で最下位に終わった長崎も、内容は残留に肉薄していた。逆に予想がいかに個々の知名度や実績に左右されているかを物語るもので、確実に"次回"への希望を残した。
 
 話はJ2に逸れるが、41節には東京Vが最下位の讃岐をホームの味の素スタジアムに迎えた。本来なら昇格プレーオフ圏内の東京Vの圧勝が予想される一戦だったが、序盤からしっかりとボールを支配したのは讃岐の方だった。讃岐を9年間指揮して来た北野誠監督は振り返った。
「ずっと守ってカウンターしか生き残る術がなくそればかりだったが、今年はボールを握れるけれど最後の結果がついて来なかった」
 
 結局J2レベルまで、ピッチに立つ選手たちの基本的なテクニックに大きな格差は消えている。戦力が拮抗している以上、明暗を分けるのは、どこに向けてまとめ上げるか、という哲学を軸にした細部の積み重ねになる。
 

次ページ一発勝負なら川崎や鹿島にも勝てる可能性を秘めたチームは少なくないが…

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