アジア初制覇の鹿島。節目の20冠を達成したとはいえ、タイトルへの欲が枯れることはない

2018年11月12日 小室功

完全アウェーのなか、鹿島はリアリズムに徹した

昌子にトロフィーを手渡された小笠原(40番)が、高らかにアジア制覇を宣言した。(C)Getty Images

 新たな歴史の扉が開かれた。
 
 鹿島アントラーズにとって喉から手が出るほどにほしかったACL王者の称号。8回目の挑戦にして、ついに悲願達成だ。
 
 大岩剛監督が「苦しい試合の連続だったが、目標にしていたアジアのタイトルを獲ることができて、非常にうれしい」と目を赤くすれば、ゲームキャプテンの昌子源も「鹿島ファミリーのために優勝したかった。みんなで喜びを分かち合いたい」と声を大にした。
 
 ジーコテクニカルディレクター(TD)が、コーチングスタッフが、スタンドに詰めかけたファンやサポーターが、クラブにかかわるすべての人たちが喜びを爆発させていく。地元・鹿嶋では第2戦のパブリックビューイングが実施されたが、深夜にかかわらず大騒ぎだったことだろう。
 
 表彰式では、昌子から優勝トロフィーを手渡されたクラブレジェンドの小笠原満男が最初に高々と掲げた。この光景を見たとき、2011年の元日をふと思い出した。鹿島が清水を2-1で破り、3年ぶり4回目の天皇杯制覇。メインスタンドに上がっての表彰式で、キャプテンの小笠原はシーズン終了とともに現役を引退する大岩に真っ先に優勝カップを託したのだ。
 
 チームのために力を尽くす先人たちへのリスペクト。こうした心遣いが鹿島のなかで大切な価値観として育まれ、受け継がれていく。そんな思いを強くし、心が温まった。
 
 アジア王者をかけたACL決勝第2戦は11月10日、敵地イランに乗り込んでの一戦だった。約10万人の観客で膨れ上がったテヘランのアザディスタジアムはブブゼラが鳴り響く、これまでとは異質の雰囲気。標高1000メートルを越え、深めの芝生、バックスタンド側からの入退場など、不慣れな面が少なくなかった。
 
 だが、ホームでの第1戦に2-0で勝っていた鹿島は驚くほど冷静だった。ペルセポリスの十八番である素早いカウンターを警戒しつつ、球際で戦い、もちろん点を取りにいく姿勢ものぞかせる。優勝するために、今、なにをすべきか。完全アウェーのなか、鹿島はリアリズムに徹した。
 
 90分間を戦い終え、スコアレスドロー。夢にまで見ていたACL初制覇へ十分すぎる結果を手に入れた。
 

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