岡崎、酒井がいた時代と変わらぬ「迷走」…“夢見がち”な古豪クラブはいかに苦境を乗り切るか!?【現地発】

2018年11月10日 中野吉之伴

攻撃サッカーを目指すも「攻撃的」なものは皆無…

多くの有能な新加入選手の他、マリオ・ゴメス(写真右)、バンジャマン・パバールといった世界レベルのタレントを揃えているシュツットガルトだが、デュッセルドルフと並んで最下位に沈んでいる……。 (C) Getty Images

 シュツットガルトが混迷している。
 
 昨シーズンのブンデスリーガは、7位でフィニッシュ。昇格チームながら、ヨーロッパリーグ出場まであと少しというところまで迫った。
 
 特に後半戦は絶好調で、バイエルンに次ぐ2位の成績。大きな武器となっていたのが、タイフン・コルクト前監督が築き上げた堅守だ。後半戦だけだと、全チーム中最少の15失点。連動性があり、引きこもって守るだけではなく、前に出て奪い取ることもできた。攻撃への切り替えも悪くはない。
 
 さらに上を目指し、今シーズン開幕前には、精力的に戦力補強に動いた。ドルトムントからゴンサロ・カストロ、ヴォルフスブルクからダニエル・ディダビ、マンチェスターシティからパブロ・マッフェオ、アルゼンチンからニコラス・ロドリゲス……。より攻撃的なサッカーを目指した。
 
 だが、ひとつ上を目指すために、と自分たちの"基盤"を手放した瞬間、これまでの魔法が解けたように負け続けた。
 
 シーズンが始まると、「攻撃的な」ものが何ひとつ見られない。守備バランスが崩壊し、スペースをいいように使われてしまう。個で勝負できる選手を増やしたところで、チームとしてのコンセプトがなければ戦いようがない。
 
 タイフン監督はスタメンを迷い続けた。毎試合ごとに代わるメンバー。そして毎試合、不安定なプレーを続けていく。結局、彼は浮上のきっかけを掴めないまま、シーズン序盤で更迭された。
 
 後任には、アウクスブルク、シャルケの監督を歴任したマルクス・バインツィールが就いたが、この監督交代による刺激も、結果には結びつかない。新監督就任後、3試合で3敗無得点11失点……。
 
 前節フランクフルト戦では、相手のパワフルな攻撃にズタボロにされた。確かに、セバスティアン・アレ、ルカ・ヨビッチ、アンテ・レビッチの3人の破壊力は凄い。長谷部誠が、「ブンデスリーガでも1、2を争うだけのものがある」と評価する攻撃陣だ。
 
 だとしても、シュツットガルトの守備は、あまりにお粗末だった。競り合いに負け、カバーがずれ、たったひとつのパスで裏をとられる。
 
 前半は特に酷かった。敵陣でボールを失い、相手にカウンターを許す。ここまでは、サッカーの試合でよくある話だ。だが、さして慌てる展開でも、ビックチャンスになりそうな局面でもなかったのに、ボールを失った時点で、自陣に選手が3人しかいないとはどういうことだ?
 
 他の選手は皆、前にいて、誰もダッシュで戻ってこない。そしてそのまま抵抗することなく、いいようにボールを運ばれてしまう。この場面では失点こそしなかったが、フランクフルトに許したチャンスのほとんどは、こうしたかたちから生まれた。シュツットガルトはもう一度、自分の足下を見つめ直さなければならない。

次ページ今後を左右するであろう重要な今節の戦い

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