これぞカップ戦の醍醐味!湘南が見せた"横浜対策"と独自のスタイルで手にした初戴冠の価値

2018年10月28日 佐藤俊

徹底した山中封じが奏功。相手のストロングポイントを消した

初優勝に感涙する湘南の選手たち。ゴールは1点のみだったが、アグレッシブに攻める姿勢が目立った。写真:田中研治

「ゴール前のシーンが多いスペクタクルな試合にしたい」
 ルヴァンカップの決勝戦は、決戦前夜に曺貴裁監督が語ったような試合になった。
 前半は湘南ベルマーレが怒涛の攻撃を見せ、後半は横浜F・マリノスが"らしさ"を見せた。果たして結果は1-0で湘南が優勝した。
 
 湘南が攻撃力の高い横浜を完封した要因は、最終ラインを高く上げ、豊富な運動量をベースに攻守の切り替えが非常に早くして対応したことなど、いろいろある。
 だが、局地戦でいうと湘南の岡本拓也が横浜の山中亮輔とのサイドの攻防を制したのが大きかった。
 
 岡本と対峙する左サイドバックの山中は、縦に快走するクロスマシーンではなく、ゲームメイクに関わるキーマンのひとりである。左サイドから中央よりにポジションを移動し、精度の高い左足から広範囲にパスを展開する。自由にしてしまうと危険なパスを通されてチャンスを作られ、とんでもないスーパーシュートが飛んでくる。黄金の左足ですでに4得点を生んでおり、横浜において、アンジェ・ポステコグル―監督の攻撃サッカーを体現する危険人物のひとりである。
 
 リーグ9節では4-4の打ち合いを演じたが、その際、山中が起点になって2ゴールが生まれている。その試合でスタメン出場していた岡本は、その試合からも、そしてその後の山中の活躍からも「山中封じ」が勝利のための自分のタスクと確信していた。

 湘南の左ウイングバックの杉岡大暉と右ウイングバックの岡本のポジションは通常から非常に高く、この日も健在だった。ただ、そこにいるだけでは怖さはないが、岡本と杉岡の良さは、そこから積極的に仕掛けていくことだ。
 
 岡本が仕掛けることで相手のラインを下げ、生まれたスペースを2列目の梅崎司が突き、ボランチの秋野央樹、金子大穀が飛び出してくる。飛び出してくる選手を相手はなかなか捕まえ切ることができず、「ここぞ」という時は逆サイドの杉岡も前に出てくる。
 
 36分、杉岡の決勝ゴールもこうした状況から生まれている。
 岡本は狙い通りのプレーができていた。
 ボールを持つとあえて誘うように山中の前に立ち、積極的に仕掛けた。それは山中との勝負を楽しんでいるようにも見えた。そこに石川俊輝らが絡み、数的優位を作って山中を自陣に封じ込めた。
 ボールを失っても素早いプレスで相手を囲い、苦し紛れのロングボールを出させて、横浜にいつもの細かいパス交換からの攻撃を展開させなかった。
 

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