【野口幸司のリーガ見聞録|クラシコ編】マドリーよりバルサのほうが問題はより深刻かもしれない

2018年10月25日 サッカーダイジェストWeb編集部

ロペテギにとってクラシコは評価を勝ち取るビッグチャンス。

野口幸司氏がバルサとR・マドリーの現状を解説する。 (C)SOCCER DIGEST

 ラ・リーガの現状を、リーガ解説のスペシャリストに訊くインタビューシリーズ『リーガ見聞録』。"クラシコ編"としてお届けする今回は、野口幸司氏が登場。現地10月28日に開催される大一番を前に、バルセロナとレアル・マドリーの今シーズンを振り返ってもらった。
 
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■R・マドリーについて

 選手のコンディションのバラつきとか、チーム戦術の不徹底とかっていうのがどうしても避けられないのが、ワールドカップ直後のシーズン。ただバルサもマドリーも、いざ蓋を開けてみたら意外と順調なスタートを切ったよね。

 マドリーはとくに、クリスチアーノ・ロナウドがいなくなったうえ、モドリッチの合流が遅れたりと不安材料もあったんだけど、意外と気にならない感じでスタートしていた。だから、いつものワールドカップ後の印象とは違うというか、「このままいっちゃうのかな」って感じてもいたんだ。
 
 ベンゼマも最初は、「ロナウドがいなくなってイキイキしはじめた」みたいな言われ方をしていたように、なんの問題もないな、というくらい安心できるプレーぶりだったし、チームもボールポゼッションをしながら、しっかり崩すこともできていた。監督交代の不安もまったくなく感じさせなかったのは、逆に意外だったかな。
 
 ジダンのときも、やっているサッカーはポゼッションで、クロースとモドリッチがワイドに開いてサイドバックを高く、ということはやっていたけど、そのあたりも何の違和感もなくて、ただボールポゼッションがさらに増えたな、という感じだった。
 
 
■4節以降の躓きの要因について
 
 一番は日程的に過密になって、チャンピオンズ・リーグも始まってっていうなかで、ターンオーバーがうまくできていないこと。11人でスタートして、このメンバーで1年間戦いますよだったら、そんなに問題はなかったと思うけど、ケガ人が出たり、あとはローテーションでターンオーバーしてっていう状況で、セカンドチームとうまく融合するのが難しかったみたいだね。これはバルサも一緒だと思うんだけど。
 
 ベイルなんかもいいスタートを切って、シーズンこのまま怪我なく終えられたらというところで、最近ちょっとまた筋肉系の故障が出てきた。マルセロも離脱しちゃったしね。
 
 ただ残念ながら、マドリーの場合、「じゃあ仕方ないね」で済むチームじゃない。ああいうビッグクラブを指揮する監督というのは、1試合でも負ければすぐに解任論が始まるしね。まあ、とくにロペテギの場合は、かなり難しい状況で監督を引き受けたわけだから、そのあたりは十分覚悟の上だと思うけどね。
 
 
■新戦力は機能しているか
 
 オドリオソラはソシエダ時代からすごくいいなと思っていた。ただ、まだマルセロみたいにギアを変えられないというか、つねにトップスピードで攻撃に参加していて、どうしてもリズムが一定になってしまうところがある。
 
 まあ、それを90分間、1シーズン続けられればってところだけど、いまはビッグクラブに入ったばかりで、まだ若いし、あまりゴチャゴチャ考えなくていいんじゃないかな。要領よくプレーするポイントみたいなものは、これからいくらでも覚えていくはずだから。
 
 なんせいまは試合に出ないと、そういう経験もできないわけだし、オドリオソラの場合、同じポジションにはカルバハルがいて、常に出られるというわけでもない。そういう意味では、ビッグクラブへ若くして旅立って、そのまま順調に伸びるっていうのは、すごく難しいことなのかもしれないね。それこそ、イジャラメンディ(現ソシエダ)やカナレス(現ベティス)も、若くして入団したマドリーではかなり苦労していたし。
 
 
■ジダンがいなくなったことの影響
 
 それほど極端ではないけど、影響はあるにはあるよね。マドリーというクラブは、ベニテスが監督をやったときもそうだったけど、どうしても選手やメディアからなめられるというか、「この監督凄いな」って思わせるまでが大変なんだ。いまは正直、ロペテギはまだスター軍団をうまくまとめきれているとは言い難い。ただ、いまのような低迷期っていうのは、逆に言えば監督の力量が試される絶好の機会なんだ。それをどう乗り切るか。
 
 カンプ・ノウで行なわれる今月末のクラシコでいい感じで勝てれば、間違いなく信頼も得られるし、負けたら真逆の反応がある。ロペテギにとっては、ある意味進退がかかった大一番と言ってもいいくらい、プレッシャーのかかったゲームになるだろうね。
 

■今後ポイントになりそうな選手
 
 ロナウドの穴を埋めるという意味でも、ベイルには期待している。ただコンディションが万全ではないようだから、そうなると攻撃陣ではベンゼマってことになるのかな。マリアーノはいい素材だと思うけど、試合に出られる時間も短いし、回数も少ない。テクニカルで、スピードがあって、パワフルだし、ポテンシャルはすごいんだけど、どうしても慣れるのに時間かかる。飛躍を遂げるには、大きな試合で1-1とか0-0とかの場面で出てきて、決勝点をあげたりするのが一番効果的だろうね。ガラリと周囲の反応が変わるはずだから。
 
 
■ディフェンスは・・・
 
 さっきも言ったとおり、マルセロの不在が大きいって気がするかな。中央はセルヒオ・ラモスとヴァランヌがいて安定感があるけど、右はカルバハルが故障がちだし、やっぱり最終ラインが安定しないと、チームの安定は難しい。バルサもピケがコンディションが悪いとか言われているけど、後ろってすごい大事なんですよね。新守護神のクルトワには、新加入だからっていう不安は微塵も感じられなかったですけどね。

次ページバルベルデはクラシコ限定で4-4-2を採用する可能性も。

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