広島時代から読み解くバランス重視の“森保スタイル”! ボランチでキーマンとなりうる選手は…

2018年10月11日 清水英斗

バランスを整える手法は、変わっていない。

コスタリカ戦で3-0の快勝を飾った日本代表。森保一監督が広島を率いた2012-2017シーズンの戦いぶりから“森保スタイル”を読み解く。(C)Getty Images

「オールジャパン」で挑んだコスタリカ戦だが、内容はむしろ欧州スタイルだった。中島翔哉、南野拓実、堂安律は、ボールを持ったら前へ猛進。バックパスを好まず、個の力でグイグイ切り込む。ボランチには球際に強く、手堅く守れる青山敏弘と遠藤航を起用。元々はトップ下タイプの長谷部誠と柴崎岳を並べた西野ジャパンとは志向が違う。DFも後ろでボールを回すことは少なく、矢継ぎ早に縦パスを入れた。全体的にアグレッシブで、ポジションの役割に忠実。欧州風味のシンプルなサッカーだった。

 
 森保一監督の戦術は、バランス重視だ。その特徴を体現していたのが、2015年の広島である。監督に就任したばかりの2012年、2013年にリーグ連覇したとはいえ、その仕事はミハイロ・ペトロヴィッチ前監督が築き上げたチームの「修正」に限定された。前体制からの修正という効率的な強化策が行き詰まって迎えた2015年のリーグ優勝こそ、森保監督の真骨頂と言っていい。
 
 当時はまだ流行り言葉ではなかったが、広島は『ポジショナルプレー』の実践者だった。11人が攻守に渡って最良のポジションを取り続け、位置的優位、質的優位、数的優位を獲得し、何が起こるか分からないサッカーの混沌、不確実性を制御する。
 
 ボールを奪取後、どう攻めるのか。これは大半のチームが考え、整理すること。当時の広島では、スピードに特化した浅野拓磨を裏へ走らせるカウンターがひとつの答だった。しかしその逆、ボールを奪われた瞬間に、どう守るか。もっと言えば、どういう形でのボールロストを想定するのか。そうした状況設計まで出来ているのが、広島だった。1トップやシャドーはサイドに流れず、ウイングの柏好文やミキッチが個人で縦に仕掛ける。ストッパーの水本裕貴や塩谷司は常に後方から、ハーフスペース(ピッチを縦に5分割した時の2番目と4番目のレーン)でサポート。むやみに数的優位を作らない。サイドの大外レーンに人数をかけすぎず、型を持って攻めることで、トランジション(攻守の切り替え)に備え、重要なスペースをあらかじめ埋めることが可能だった。攻める、守る、またはボールを奪う、ボールを奪われる。広島はすべての事象を11人のポジショニングで安定させたのである。
 
 3バックと4バックの違いはあるものの、アタッカーの質的優位をベースに、全体のバランスを整える手法は、広島時代から変わっていない。コスタリカ戦でも、中島や堂安らの仕掛けをサポートしたボランチやSBは、技巧派ではなく、シンプルなパスと守備の堅さが特性のバランサータイプだった。これはひとつの特徴。森保監督は「アグレッシブにやりたいと常に思っていた」と自身の考えを語ったが、アグレッシブさを志すなら、なおさらバランスは大事になる。アタッカーの質的優位から逆算し、選手に適した『型』を見出さなければならない。
 

次ページ戦術の出発点となるアタッカーは大事だ。

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