U-16日本代表をアジア制覇に導いた「競争的ローテーション」と言うべき森山スタイルの効能

2018年10月08日 川端暁彦

レギュラー組には緊張感を、サブ組には下剋上のマインドを

森山監督率いるU-16日本代表が、タジキスタンを下してアジアの頂点に立った。写真:佐藤博之

 U-16日本代表が12年ぶりにアジアの頂点に立った。U-16タジキスタン代表を相手にFW西川潤(桐光学園高)が決勝点、守ってはDF半田陸(モンテディオ山形ユース)を中心とする守備陣がゴールに鍵をかけ、1-0で勝ち切ってみせた。
 
 歓喜と共にカップを掲げた日本の主将・半田は「本当に良かった」と肩の荷を下ろしたように微笑みつつ、「こっち(マレーシア)に入ってから少しずつ、少しずつ強くなってきたチームだった」と振り返った。
 
 決戦前日に行なわれた紅白戦、半田は少し違った観点から手応えを感じていた。「僕らは負けちゃったんですけど」と半田が言うように、レギュラー組が苦杯をなめたのだが、この点についてむしろポジティブだった。
 
「前まではスタメン組のほうが押していたり、やる気があったりという感じでしていたけれど、今は控え組も全然負けていない」(半田)
 
 真に強いチームは控え組が強いもの。大会に入ってからも、そして前日の紅白戦の内容次第でも先発メンバーを組み替えて競争を重ねる森山佳郎監督の方針もあり、チーム全体の温度感が確実に変わってきていた。その手応えを、半田は感じていたのだ。
 
 一方、「本当に逞しくなってくれた」と目を細めたのは森山監督である。「1試合1試合成長しながら、アジアの頂点に立てました」と胸を張った上で、「大会前からこの言葉を言ってみたかったんですよ」と破顔した。成長なくして勝利なし。その確信をもって、あえて大会中でも選手の心理面を揺さぶるような言葉も投げかけ、成長を促してきた。
 
 決勝でGK野澤大志ブランドン(FC東京U-18)を先発に大抜擢するなど、予定調和の選手起用も最後まで拒んだ。同じスタメンを並べたのはわずかに1度。23人全員を起用したが、決して横並びの起用ではなく、単純なローテーションでもない。競争的ローテーションと言うべき形が森山スタイルだった。序列は作りつつも、不動の序列とはせず、幅広く選手にチャンスを与えながら逆転の余地を常に残した。
 
 レギュラー組には緊張感を、サブ組には下剋上のマインドを。和気あいあいと過ごした仲良しのチームだったのは確かだが、競争関係は最後までしっかり残した。
 

次ページ指揮官が選びたくても選べない選手が相当数いたのも確かだ

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