【小宮良之の日本サッカー兵法書】 成功した選手の“親”は何をしてきたのか? その重要度とは?

2018年10月06日 小宮良之

親が「モンスター化」すると子どもは…

クラブ、代表の両方で世界一を経験したジラルディーノ。20年のキャリアで12のクラブを渡り歩き、中国でもプレーした。写真は2006年ドイツ・ワールドカップ時。 (C) Getty Images

 プロサッカー選手として大成できるかどうか?
 
 そこにある差は、紙一重なのだろう。では、そのわずかな差はどこで生じるのか。
 
「家族」
 
 それは外的な要因として、決して小さくはない。
 
 イタリアを代表するストライカーで、先日、現役引退のニュースが流れたアルベルト・ジラルディーノのルーツ取材をしたことがある。
 
 イタリア代表として世界王者にもなった「ジラ」が、どのように育ち、セリエAを代表するストライカーになったのか――。それを知るために、両親や友人、ジュニア時代の監督、スカウトやエージェントなど多くの人に話を聞いた。
 
「アルベルトの才能は、誰にでも分かるものでした。他の誰かが何かをした、というわけではありません。本当の才能というのは、そういうものです」
 
 当時、代理人契約を結んでいたボネット氏は言った。
 
「我々はエージェントとして、他の誰かよりも少し速く、彼に辿り着けただけです。しかし、一流になるには、才能だけでは足りません。同じ時期、ピアチェンツァ(当時、ジラが所属)のユース選手5人と契約しましたが、トッププロとして活躍したのはアルベルトだけです」
 
 ボネット氏は眉間に皺を寄せながら、プロとして生き残る難しさを淡々と語る。ユースまでは、才能があれば生き残れる。しかしそこから先は、才能だけでは足りないのだ。
 
「本人の素行もそうですが、家族や友人にも恵まれなければなりません」と語るボネット氏が、家族について語る姿は印象的だった。
 
「家族のなかでも、特に両親がどこまで普通に接することができるか。この世界では、少し子どもが活躍すると、親がしゃしゃり出てきて、『もっと活躍させてほしい!』『なぜ、あんな子がプレーしているのか』と四六時中わめき散らし、モンスター化する場合があります。
 
 そういう姿を見せられた子どもはストレスを感じてしまい、次第にプレーに身が入らなくなってしまうのです。その点、アルベルトには穏やかで愛情豊かな両親がいて、本人も自分を律することができたのです」
 
 ジラは、プロ選手として必要な素養を、家族のなかで身につけていたということだろうか。

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