「これが首位だな…」警戒しても止められない川崎の凄みを長崎の選手たちはどう感じたか?

2018年10月01日 藤原裕久

「不用意に食い付くとパスを出されるし、食い付かないと…」

ベテランの中村をはじめ、試合巧者ぶりを見せつけた川崎の選手たち。僅差のゲームだったが、長崎の選手にとっては大きな差を見せつけられたようだ。(C) J.LEAGUE PHOTOS

[J1リーグ28節]長崎1-2川崎/9月29日/トラスタ
 
「局面、試合の流れ、ボールコントロール、そしてパスや止めるといった技術も含めて、Jの中で一番、完成度が高い」
 試合2日前、高木監督は川崎をそう表現した。
 
「ベテランと呼ばれる選手たちが、どこよりも上手い」(黒木聖仁)
「ボールを持たれるのは避けられない」(徳永悠平)
「打ち合えば厳しい相手」(島田讓)
 選手たちからも口々に同様の言葉が突いて出る。そして言葉どおり川崎はやはり強かった。
 
 荒天の中、3日前に湘南と戦った川崎のコンディションは決してベストとは言えなかった。何人かの選手の動きは明らかに重く、試合後に鬼木監督が「中々ない」と認めた2トップシステムへの不馴れさが、そこに拍車をかけていた。通常のチームならばゲームの入りに失敗したと言えるだろう。
 
 だが川崎は違った。時間が経つごとに動きの重さも、不馴れな2トップシステムでの連係を修正して、試合の主導権を奪っていったのである。その修正力とでもいうべき力の中心を担ったのが中村憲剛だ。中盤の底でボールをさばいたかと思えば、前線へ決定的なパスを通しつつ、時には自らシュートを狙い、なおかつ簡単にはボールを失わない。
 
「不用意に食い付くとパスを出されるし、食い付かないとそのままやられてしまう。そこの判断が難しかった」
 長崎DF陣の要である髙杉亮太はそう言って、中村をフリーにしてしまったことを悔やんだが、試合前から警戒していてもなお、止めるのが難しいという事実が、その存在の大きさを物語っていると言っていいだろう。
 
 分かっていても止められなかったのは中村だけではない。2度の失点シーンはいずれも小林の動き出しの速さにやられたものだし、家長のドリブルや大島のフィードから何度もチャンスを作られもした。いずれも試合前の時点で充分に警戒していたはずのプレーで、である。
 
 単なる技術だけで勝負をしてくるのであれば、スカウティングとハードワークで充分に対抗できただろう。だが、しかし――。

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