イニエスタにリージョが加わっても… バルサ化を図る神戸が乗り越えるべきいくつかの課題

2018年09月25日 吉田治良

みてくればかり整えても実態が伴わなければ…

神戸の新監督に就任したフアン・マヌエル・リージョ氏(左)とアンドレス・イニエスタ。神戸にポジショナルプレーは浸透するのか。リージョ写真:Getty Images/イニエスタ写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 ヴィッセル神戸がバルセロナになることはない。
 
 理由はふたつ。
 ヨハン・クライフの時代から、長い年月をかけて培われた「ボールをつなぐ」文化と哲学がないから。
 そして、たったひとりでゲームを決めてしまう、リオネル・メッシという唯一無二のスーパータレントがいないから。
 
 つまりは、神戸に限らず、世界中のどんなチームであってもバルサにはなれないということだ。
 
 近年はカンテラ(下部組織)から優秀なタレントが育っていない(育っていたとしてもトップチームに引き上げられない)バルサだが、それでもクラブ哲学に合致した人材をピンポイントで外部に求めながら、いわゆる"バルサイズム"は連綿として受け継がれている。時代の流れに合わせてマイナーチェンジは繰り返してはいるものの、ボールを握り、ゲームを支配しようとする考え方は不変だ。
 
 そうしたスタイルを、ネットショッピングでもするように簡単に手に入れてしまおうと考えるのは、あまりに都合のいい話だ。本来であれば、育成組織からじっくりと時間をかけて哲学を植え付け、一歩ずつバルサ的なフットボールを形作っていくのが筋だろう。
 
 ただ、バルサにはなれなくても、バルサに近づくことは可能だし、クラブの指針として「バルサ化」を高らかに宣言する神戸の志には好感も抱いている。
 そして、それをできるだけ短期間で実現しようと、アンドレス・イニエスタという分かりやすいアイコンを連れてきた企業努力も評価していいはずだ。
 
 とはいえ、明確なゴールだけを定め、準備運動もそこそこにいきなりフルマラソンを走り始めたのだから、身体のあちこちに歪みが生じるのは当然だろう。
 Jリーグでは24節から3連敗を喫し、9月17日には吉田孝行監督の解任とファン・マヌエル・リージョ新監督の就任が発表されている。
 
 ジョゼップ・グアルディオラの師として、またポゼッションフットボールの信奉者として知られるリージョの招聘は、イニエスタの獲得に続く"バルサ化へのショートカット第二弾"と言っていい。減速中のチームに再び鞭を入れようという意図だろう。
 ただ、みてくればかり整えても、そこに実態が伴わなければ、まさしく張子の虎のままだ。その効果はイニエスタ加入当初のように長続きはしない。
 

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