【秘話】「祖国はどちらか?」で悩んだラキティッチ…スイスではなくクロアチアを選んだ理由

2018年09月20日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

憧れの名手の言葉に心が揺れる。

ロシアW杯でクロアチアの決勝進出に大貢献したラキティッチ。
photographs by Getty Images

 2007年5月5日、当時クロアチア代表督を務めていたスラベン・ビリッチは、19歳の若者を説得するためにスイスのバーゼルを訪れた。
 
「俺について来い。俺たちの国のためにプレーするんだ。お前が来てくれるためなら全力を尽くすぞ」
 
 憧れだった往年の名手の言葉に、イバン・ラキティッチの心は揺れた。移民二世としてスイスに生まれたMFは名門バーゼルで若くして頭角を現わし、この1年前にはスイスU-21代表にデビュー。すでにA代表昇格の打診も受けていた。
 
「ビリッチの話を聞きながら、心の中で『あなたについて行きたい!! 』と叫んでいた。でも、あの時は即決ができなかった。スイスが僕に与えてくれたものはあまりにも大きかったから。だから少し考える時間をもらったよ」
 
 チームの世代交代を推し進める中で、ラキティッチがルカ・モドリッチと並ぶ中盤の核になると考えていたビリッチは、本人の立場を考えて辛抱強く返事を待った。
 
 建設会社で働く元サッカー選手の父親が独立間もない本国から取り寄せてくれたユニホームを毎日のように着ていた少年時代から、クロアチアには特別な感情を抱いていた。その一方で、スイスで生まれ、教育を受けながら成長していく過程で"スイス人としてのアイデンティティー"も確かに芽生えていた。自分の祖国はどちらなのか? あらゆる重圧と闘いながら部屋にひとり籠もり、約50日間に渡って考え抜いた末、ラキティッチは答を出した。
 

次ページ避けてきた国家斉唱をW杯決勝では…。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事