【なでしこ優勝の舞台裏】受け継がれた先代の粘り! 先発は当日まで明かされず、新ポジションへの対応も柔軟に…

2018年09月02日 早草紀子

ワンチャンスを決めて勝利を引き寄せる戦い方はかつてのなでしこジャパンの十八番

2大会ぶりの金メダルを獲得したなでしこジャパン。苦しい戦いの連続だったが、粘り強く勝ち上がった。写真:早草紀子

 なでしこジャパンが2大会ぶりのアジア大会優勝を手にした。が、メダルセレモニーでの笑顔も取材エリアに入るころには引き締め直し、それぞれに修正と課題を口にした。
 
 それもそのはず。決勝では中国に主導権を握られ、日本らしさを完全に封じられてしまったのだ。にも拘わらず、沈黙したままのスコアを動かしたのは日本だった。終了間際、岩渕真奈(INAC神戸)から右サイドの中島依美(INAC神戸)に展開。その折り返しに準決勝でも先制点を決めた菅澤優衣香(浦和レッズL)が気迫のダイビングヘッドで決勝弾を叩き込んだ。これだからサッカーは分からない。
 
 国内組で臨んだ今大会をギリギリのところで勝利をもぎ取るように勝ち進んだ。グループリーグこそ1チーム少ないグループCに入ったが、相手はアジアの強豪入りを目指す成長著しいタイ、ベトナム。油断ならない相手にも順調に白星を重ねた。1位で通過したはずが、準々決勝はディフェンディングチャンピオンの北朝鮮、準決勝は比較的緩い組から日本に照準を合わせてきた韓国、決勝は今大会の成長株でもある中国と、どんなに劣勢であろうとも、アジアの強豪すべてと対戦して打ち破った優勝だ。
 
 高倉麻子監督は全招集メンバーを使いながら、いかに厳しい戦いになろうともチャレンジを欠かさなかった。準決勝ではさすがに決勝進出を第一に考えて、メンバーを固めてきたが、國武愛美(ノジマステラ)を初めて左サイドバックで起用して驚かせてくれた。
 
 決勝ではフィジカルに長けた中国を相手にあえて前線を小柄な選手の機敏さに賭けて"つなぐ"サッカーを貫こうとした。その賭けも、後半に菅澤優衣香(浦和レッズL)というポスト力のある長身FWという計算できるカードを持っているからできることでもあった。指摘され続けている決定力不足を払拭するにはまだ課題は少なくないが、それでもここぞの一発が出始めてはいる。
 
 ワンチャンスを決めて優勝を引き寄せる。こうした戦い方は、かつてのなでしこジャパンの十八番でもあった。「先代のなでしこジャパンの粘り強さが受け継がれてきた」と高倉監督も認めるところ。それは守備にも通じている。

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