【小宮良之の日本サッカー兵法書】 大舞台で日本代表に幾度も“悲劇”を引き起こさせたものの正体

2018年08月22日 小宮良之

欧州や南米のチーム相手に後手に回る原因は?

大健闘として評価されたベルギー戦だが、試合運びには大きな大きな悔いを残した。 (C) Getty Images

「(プレスを)はめられてしまった」
 
 日本では、試合後の監督記者会見で、そういう反省の弁がしばしば聞かれるものだ。それは、状況の説明としては正しいのだろう。決して間違っているわけではない。
 
 とはいえ、はめられたまま終わってしまっては、批判を免れることはできない。
 
 どのチームも、相手の良さを出させないために手を打つ。その手の打ち合いのなかで、序盤戦の形勢が表われてくる。
 
 しかし、サッカーはそこからのスポーツだと言える。プレスをはめられたら、どのように外し、逆に相手をどのようにはめるのか。それを選手間で共通認識し、やり方を変えられるチームは強い。はめられたまま90分間、何もできなかったとしたら、問題の根は深いと言えるだろう。
 
 ただ残念ながら、日本サッカーではこのケースが少なくない。
 
「欧州や南米のチームと対戦して痛感するのは、こちらが一度はめて優勢に立っても、彼らはそれ打開するため、やり方を変えてくるということだ」
 
 日本のユース年代の指導者は、こう明かしている。アジアやアフリカのチーム相手なら、相手を研究して挑めば、そのかたちで通用するという。しかし、欧州や南米のチームは戦術を柔軟に組み替えられるだけに、日本は後手に回ることを余儀なくされるのだ。
 
「戦術的な理解度が足りない」
 
 いまだ日本サッカーが突きつけられる現実だが、そこだけを切り取っても、臨機応変さの欠如が根っこにあるようだ。
 
 その一方、日本サッカーは「機先を制す」という戦い方を得意とする。一気に相手の勢いを拉ぎ、そのまま押し切るというやり方だ。
 
 2012年に行なわれたロンドン・オリンピックのグループリーグ・スペイン戦(1-0)でも見られたように、スタートからアクセルを踏み、相手の慢心を突く。ハイプレスに対して面食らった相手が、思わず退場者を出したことを利して勝利している。
 
 まだ記憶に新しい今夏のロシア・ワールドカップのコロンビア戦(2-1)も、実は同じ勝ち方だった。

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