[コウチーニョのテクニック分析]際立つのが密集地帯でのボールコントロールと多彩なキック

2018年07月20日 ロベルト・ロッシ

特筆すべきはそのシュート精度。

フィリッペ・コウチーニョ
●所属クラブ:バルセロナ
●代表チーム:ブラジル代表
●生年月日:1992年6月12日
●身長・体重:172cm・68kg

 繊細なタッチでボールを操り、決定的なパスでチャンスを作り出せば、ドリブルで敵陣を切り崩し、正確なシュートで自らゴールを奪う――。いまや世界最高峰の攻撃的MFと言えるのが、フィリッペ・コウチーニョ(バルセロナ)とケビン・デ・ブルイネ(マンチェスター・シティ)だ。ふたりのテクニシャンは、それぞれどんな特徴を持っているのか。現役イタリア人監督がそのテクニックを徹底分析する。第1回は、ブラジル代表の一員として出場したロシア・ワールドカップでも輝きを放ったコウチーニョだ。
 
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 リバプールでもバルセロナでも、主に4-3-3や4-4-2の左ウイングとしてプレーしてきたコウチーニョは、今回のロシア・ワールドカップでもそうだったように、ブラジル代表では一列下がって4-3-3の左インサイドハーフとしてプレーすることも少なくない。
 
 決して守備力が高いわけではないものの、守備の局面でもサボらずにスペースを埋める献身性、そして何よりも中盤と前線を結びつつラスト30メートルの攻撃を演出するプレービジョンが、このポジションで起用されている一番の理由だ。マルセロ、ネイマールと連携した左サイドからの崩しは、ブラジル代表にとって最大の武器で、そのオーガナイズ役を担っていたのはコウチーニョだった。
 
 敵の2ライン(DFとMF)間、左のハーフスペースを主戦場とし、そこからドリブル突破、アシスト、シュートと多彩なレパートリーでフィニッシュの場面を作り出すプレースタイルを支えているのは、スペースと時間が極めて限られた敵陣深くの密集地帯でも自在にボールを操る繊細なタッチと的確なボールコントロール、そして正確極まりないキックだ。
 
 172センチ・68キロという小柄な体格にもかかわらず、大柄で屈強なDFに囲まれながら決定的な違いを作り出せるのは、このすぐれたテクニック、とりわけ際立ったプレー精度の高さがあるからだ。
 
 特筆すべきはシュート精度だ。とりわけ左サイド斜め45度から巻くようなカーブを描いてファーポスト際に突き刺すシュートは、もっとも得意とするプレーのひとつだ。右足インフロントでボールの中心を捉えながら擦るように回転をかけることで、ボールはファーポストの外側に向かいながら徐々に弧を描き、やや落ち気味にポストの内側に飛び込んでいく。ワールドカップのスイスとの初戦で決めた先制点は、まさにその得意の形だった。
 
 コウチーニョはインサイド、インフロント、インステップ、アウトフロント、アウトサイド、そしてつま先や足裏、踵まで、足のあらゆる部分を使ってボールを操るテクニック、そしてそれを支えるセンシビリティーと繊細なボールタッチを備えている。したがってシュートの時も状況に応じて様々なキックを使い分け、そのどれも高い精度で枠を捉えるのだ。
 
 フットサル出身らしくトゥーキックでGKのタイミングを外し、ネットを揺らすこともしばしばある。ただし、体格的な問題からパワーには限界があるため、シュートの射程距離は20メートル前後と、例えばネイマールやデ・ブルイネと比べると短めだ。
 

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