批判に晒されてきたポグバはいかにして、異色のリーダーへと大変身を遂げたのか【ロシアW杯】

2018年07月15日 結城麻里

レ・ブルーを人間の身体にたとえると頭脳は誰?

この4年間は会見場にさえ姿を現わさなかったポグバ。快進撃を続けるレ・ブルーにあって、かつての問題児はその中心軸に腰を据え、熱いメッセージを送り続けている。(C)Getty Images

 世紀のワールドカップ決勝を迎えるレ・ブルー(フランス代表の愛称)で、大きく変貌を遂げた選手たちが話題を集めている。アントワーヌ・グリエーズマン、ラファエル・ヴァランヌ、そしてポール・ポグバの3人だ。
 
 4年前のグリエーズマンは、ドイツに屈して涙に暮れるフレッシュな新人にすぎなかった。ファイナルまで進出してポルトガルに敗れた2年前のEURO2016では得点王と大会MVPに輝くも、「リーダーには興味がない」と繰り返してきた。SNSに凝りすぎて批判を受け、キリアン・エムバペの急台頭をどう消化するかも注目の的だった。

 
 ところがどうだ。今大会でグリエーズマンは、異色のリーダーへと大変身。煌びやかな脚光はエムバペに譲り、自身は「陰の仕事人」として振る舞い、断固フォア・ザ・チームに徹しているのだ。言わば「アトレティコ・マドリー流」を定着させたのである。そういえばエムバペも、「レ・ブルーを人間の身体にたとえると頭脳は誰?」と訊かれ、「グリエーズマン」と答えた。
 
 
 ヴァランヌも同様だ。4年前は大事な場面で競り負けて失点を招き、ドイツに敗れた。2年前は開幕寸前の怪我により、EURO出場をフイにした。その後もヴァランヌは「デュエルでヤワすぎ」「レアル・マドリーでは隣にセルヒオ・ラモスがいるから活躍できている」「リーダーにはなり切れない」など、なにかと批判を浴びてきた。
 
 ところが今大会でのヴァランヌも、知的で強靭なリーダーに大変身。記者会見の語り口は非のうちどころがなく、「平静さを醸し出しながら的確な言葉を発する。これが大事なリーダーシップなんだと、(ジネディーヌ・)ジダンの言動を見て確信した」と言い切る。ピッチ上でも的確にピンチの芽を摘み取る奮迅の働きぶりで、いまや「ヴァランヌが隣にいるからラモスが活躍していたのかも!」と言わしめるほどだ。
 
 それでも、もっともスペクタクルに変身したのは、ポグバだろう。
 
 若くして「バロンドールになる」と大口を叩き、ソーシャルネット上でもピッチ上でも派手なパフォーマンスにこだわり、レ・ブルーでは批判が尽きなかった。そんなメディアに反発して、4年間に渡っていっさい記者会見に姿を現わさなかった。もうお分かりだろう。そんなポグバも、異色のリーダーへと大変身を遂げたのである。

次ページ「セ・パ・フィニ! セ・パ・フィニ! セ・パ・フィニ!」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事