神童・エムバペの奥深さと看過できない態度。小細工に没頭するのは少しばかり早すぎる

2018年07月14日 吉田治良

接触プレーで必要以上に痛がり、相手を挑発するのは…

エムバペの実力に疑いの余地はない。準決勝のベルギー戦でも唸らせるようなプレーを披露した。(C)Getty Images

 準決勝のベルギー戦で改めて確認できたのは、神童と呼ばれる19歳の奥深さだ。
 
 キックオフ直後にいきなり縦へ強引に仕掛けたのは、いわば伏線だったのだろう。
爆発的なスピードに対する相手の警戒心をマックスにまで高めたことで、その後のプレーを実にやりやすくしている。
 
 サイドチェンジのボールをトラップせずにダイレクトで中央へ折り返す、縦に行くと見せかけてカットインから絶妙なスルーパスを送る、いつの間にかトップ下に構えて芸術的なヒールパスで決定機を演出する。
 
 たとえ自慢のスピードを活かせるスペースがなくとも、キリアン・エムバペはいくつもある引き出しの中から、状況に合わせてピタリとはまるアイデアを取り出しては、「これならどうだ?」とばかりにピッチの上に広げるのだ。
 
 豊かな才能は、もはや万人が認めるところだろう。
 
 けれど、その才能に自惚れてはいけない。自分がなんでもできる魔法使いだと勘違いしてはいけない。もちろん、酸いも甘いも噛み分けた大人たちを見下すようなことがあっては、絶対にいけない。
 
 クロアチアとのファイナルを前にそんな警鐘を鳴らしたくなるのは、決勝トーナメントに入って以降のエムバペの態度に、目に余るものがあるからだ。
 
 準々決勝のウルグアイ戦では、クリスティアン・ロドリゲスの手の甲がすれ違いざまに少し腹部をかすめただけで大げさに倒れ、両者が睨み合う乱闘寸前の状況を招いた。
 
 準決勝のベルギー戦では、1-0のリードを守り切りたい終盤に、2人をかわそうと無謀な突破を仕掛けて逆にカウンターを食らい、ポール・ポグバの大目玉を食らっている。
 
 そうかと思えば、アディショナルタイムには露骨な時間稼ぎで相手にボールを渡さず、素知らぬふりでドリブルまでして、怒ったアクセル・ヴィツェルに背中を突き飛ばされている。
 
 ウルグアイ戦とベルギー戦では、いずれも遅延行為でイエローカードを頂戴した。それでもエムバペは悪びれもせず、平然とそれを受け流すのだ。
 
 接触プレーで必要以上に痛がってみせたり、相手を挑発するようにテクニックをひけらかしたりするのは、まさかパリ・サンジェルマンの先輩の悪い影響ではないだろう。
 

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