西野戦略の真髄は「割り切り」と「柔軟性」。しかし、その裏には落とし穴も…

2018年06月25日 清水英斗

セネガルは明らかに日本をリスペクトしていた。

セネガルの守備陣は、大迫勇也に裏を取られるパターンを、かなり警戒していたようだ。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

 実に予想外な試合だった。リスペクトの矢印が、いつの間にか、ひっくり返っていた。
 
 強くて速いセネガルに対し、日本は激しいトランジション(切り替え)を生む中盤の攻防を避け、ゲームプランを構築しなければならない=セネガルをリスペクトして戦わなければならない。間違いなく試合前は、そう考える向きが多かったはず。
 
 ところが、ふたを開けてみると、むしろ相手をリスペクトしているのは、セネガルのほうではないか。
 
 ポーランド戦のセネガルは、4-4-2でスタートし、圧倒的なカウンターを繰り出しながらリードを奪うと、後半途中からは4-3-3で中盤の守備を厚くし、2-1で逃げ切った。
 
 一方、日本戦では、セネガルは最初から4-3-3で中盤を厚くし、選手もひとり変えている。4-2-3-1の日本に対し、各所が1対1でかみ合うように戦術を調整した。
 
 そして、この大会屈指のボール奪取力を誇るセネガルに対し、なんと日本は真っ向勝負を挑んでいる。相手の速いプレスを受けた昌子源を始めとするDF陣も、恐れず縦パスを付けた。最初に鍵を握ったのは香川真司だ。アンカーの13番MFアルフレッド・エンディアイエに捕まらず、その両脇のスペースで、たくさんの縦パスを引き取った。さすがのクオリティ。
 
 それ以上に驚いたのは、このエリアでフリーになった香川に対し、センターバックのカリドゥ・クリバリと、サリフ・サネが出て来なかったことだ。コロンビア戦の開始3分のように、香川にセンターバックが釣り出され、大迫勇也に裏を取られるパターンを、かなり警戒していたのではないか。セネガルは明らかに日本をリスペクトしていた。
 
 さらに日本は、柔軟性も見せる。1戦目の成功パターンに固執せず、フリーになった香川や大迫から、ボールをサイドへ展開。長友佑都と酒井宏樹がサイドで高い位置を取って押し込み、セネガルのプレスを後追いにさせた。コロンビア戦の前半とは違うパターンで、分厚い攻撃を可能にしている。
 

次ページ次々と現れる、日本の攻め筋。セネガルは常に、後手、後手。

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