日本代表がドイツ撃破のメキシコから学びたい「闘う姿勢」と「勝利への執着心」

2018年06月18日 白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト)

メキシコに見たサッカーの神髄。

気迫溢れるプレッシングと素早いカウンターでドイツに対抗したメキシコは見事に下馬評を覆した。 (C)Getty Images

【ロシアW杯 グループF第1戦】ドイツ 0-1 メキシコ/6月17日/ルジニキ・スタジアム(モスクワ)

 前回王者にして今大会も優勝候補に挙がるドイツを撃破したメキシコの「闘う姿勢」と「勝利への執着心」に、サッカーの神髄を見た。

 実績でもタレント力でも明らかに劣るにもかかわらず、メキシコはなぜドイツを破ることができたのか。

 通常の4-3-3ではなく4-4-1-1を選択したシステム、受け身になりながらも決して下がり過ぎずバイタルエリアにスペースを与えないオーガナイズされた守備組織、カルロス・ベラやハビエル・エルナンデスを中心とした鋭く整理されたカウンターアタック、ファン・カルロス・オソリア監督の得意とする奇策(本来SBのミゲル・ラジュンを右サイドハーフで先発させ、CFのラウール・ヒメネスを左サイドハーフで途中起用)など、戦術的なポイントはもちろん少なくない。
 

 しかし、前回王者から金星を奪うビッグサプライズを起こせた最大の理由は、間違いなく個々の「闘う姿勢」と「勝利への執着心」だ。

 メキシコの登録23人の平均身長は179.9cmで、ドイツは185.9cm。競り合いのもうひとつの大きな違いとなる体重差も大きく、フィジカル的な資質ではそれこそ雲泥の差がある。それでも彼らは、屈強な相手に勇敢なデュエルを挑み、抜かれても抜かれても必死に食い下がり、最後の最後は身体を投げ出して相手のシュートを弾き返した。

 デュエルの勝利回数は身長差ゆえ空中戦こそ劣ったが(12対14)、地上戦では見事に上回った(58対46)。60%のボール支配率を許し、25本のシュートを打たれ、8回のCKを与えながらも、7本のブロック、43回のクリアで世界王者を無失点に抑え込んだのだ。

 そして、守備でも攻撃でも次のプレーのために誰もが懸命に走った。例えば右サイドハーフのラジュンは、守備ブロックの一員として敵の侵入を必死に抑えながら、ボール奪取後は目を疑うようなスピードで縦に飛び出して前線のベラとエルナンデスとともにカウンター攻撃の一翼を担ったのだ。
 

次ページ本当に大事なのは戦術論やシステム論ではない。

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