淡白に敗れる西野ジャパンに問いたい。「なぜ、ポジティブでいられるのか」と

2018年06月11日 吉田治良

代表チームを取り巻く冷めた空気感は、8年前とそっくりだ

西野ジャパンは、レギュラーと控えの線引きが、メンバー選考時からすでにあったかのような印象さえ受ける。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 8年前の、ちょうど今頃の感情を思い出してみる。
 
 2010年の南アフリカ・ワールドカップの開幕が目前に迫っても、当時『週刊サッカーダイジェスト』の編集長だった私に、高揚感はほとんどなかった。
 
 もちろん「奇跡」が起こってほしいと願ってはいたけれど、心の大部分を占めていたのは「大会後の不安」だった。2006年大会に続いて2大会連続でグループリーグ敗退となれば、日本サッカーを覆う熱はどこまで冷めきってしまうのだろう。サッカー専門誌など、誰も見向きもしなくなってしまうのではないか。まだ初戦を迎えてもいないのに、鬱々とした気持ちになっていた。
 
 私だけではない。当時はそれこそ、日本中がしらけきっていたように思う。大会前のテストマッチで4連敗を喫した岡田武史監督率いる日本代表に期待する者は、かなりの少数派だっただろう。
 
 時空を切り取って、すっぽり8年後にはめ込んだように、あの頃とロシア・ワールドカップの開幕を控えた現在の状況は、とてもよく似ている。3月のマリ戦以降の4つのテストマッチで1分け3敗という散々な結果だけでなく、代表チームを取り巻く冷めた空気感までもがそっくりだ。
 
 唯一異なるのは、監督交代に踏み切ったか否かという点だ。8年前の岡田監督は、メディアの解任キャンペーンにも屈せずに本大会でも指揮を執ったが、ロシアに向かうチームは予選を戦ったヴァイッド・ハリルホジッチを解任し、西野朗新体制で戦う道を選択している。
 
 だからこそ余計に不思議に感じるのは、監督解任という荒療治を施したとは思えないほど、現在のチームから危機感や焦燥感が伝わってこないことだ。
 
 西野体制の初陣となったガーナ戦で3バックが試されたが、ピッチに立つスタメン11人の顔ぶれは、3バックでも4バックでもさほど変わらない。レギュラーと控えの線引きが、メンバー選考時からすでにあったかのような印象さえ受ける。どんなにボールが収まらなくても、本田圭佑はトップ下/シャドーの一番手であり、スイス代表のジェルダン・シャキリにスピードで簡単にちぎられようと、長谷部誠は本大会でもピッチに立ち続けるのだろう。
 
 8年前のほうが、はるかに危機感はあった。
 

次ページ8年前に岡田監督がやってのけたことのほうがギャンブルだ

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