イタリア人監督が西野ジャパンを徹底分析!「コンセプトはザック時代に戻った」「ラスト30mの攻略は…」

2018年06月01日 ロベルト・ロッシ

3バックのシステムにすんなりとなじみ消化していた

最終ラインに本来MFの長谷部を起用したのは、後方からのビルドアップの質を高めることが狙いだろう。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 監督交代は、基本的なコンセプトのレベルから明らかな変化をもたらした。
 
 早いタイミングで縦にボールを運んで2ライン間に素早く送り込むというハリルホジッチ時代のコンセプトは棚上げされ、後方からパスをつないでビルドアップし、一旦中盤でポゼッションを確立するというコンセプトに大きく舵を切った。方向性としては、ザッケローニ時代のそれに戻ったということができるだろう。それに伴って、システムとメンバーの人選のいずれについても変化があった。
 
 基本システムは従来の4-3-3から3バックの3-4-2-1に変更された。とはいえ、3バックの中央には従来の4-3-3でしばしばアンカーを務めていた長谷部が下がっている。その観点から見れば、4-3-3で後方からビルドアップする時の陣形がそのまま基本システムになったという言い方もできなくはない。
 
 具体的に言えば、4-3-3のCBコンビが開いてアンカーがその間に落ち、SBはインサイドハーフと同じ高さまでポジションを上げ、左右のウイングは内に絞り気味のポジションを取れば、この3-4-2-1になる。この一点からだけでも、西野監督は後方からのビルドアップと中盤でのポゼッション確立によってボールと地域を支配して戦うという、ザッケローニ時代のコンセプトに立ち戻ろうとしていることが見て取れる。
 
 人選も、ハリルホジッチ時代と比較してよりテクニカルなプレーヤーが重用されている。最終ラインに本来MFの長谷部を起用したのは、後方からのビルドアップの質を高めることが狙いだろう。セントラルMFに大島、右ウイングに本田を起用したのも、ポゼッションとそこからの崩しを重視しているからだろう。
 
 伝統的に日本のサッカーはブラジルサッカーの影響を強く受けており、ボールポゼッションへの志向が強いテクニカルなスタイルが好まれてきた。それは日本のサッカー文化の一部になっているように見える。
 
 その意味ではハリルホジッチが目指したダイレクト志向の強いスタイルよりも、西野監督が持ち込んだポゼッション志向のスタイルのほうが、日本には馴染みやすいのではないかと思う。実際、少なくとも代表レベルではここ4年間試されたことがなかった(ザッケローニはオプションとして導入を試みた)にもかかわらず、日本の選手たちはこの3バックのシステムにすんなりとなじみ消化して、自然にプレーしているように見える。
 

次ページ失点はいずれもミスによるもの。試合の内容自体は悪くなかった

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