「もしサカイがフランス人だったら…」マルセイユ酒井宏樹の実力に仏誌編集長が太鼓判!

2018年05月09日 レミー・ラコンブ(フランス・フットボール誌編集長)

サポーターは「養子」のように受け入れている

ラコンブ編集長がリーグアン屈指のSBと評する酒井。怪我からチーム練習に復帰し、来週水曜日のEL決勝に照準を合わせる。(C)Getty Images

 ヒロキ・サカイは、ホンモノのサムライだ。
 
 彼はとにかく、どんな状況にあっても頼りになるフットボーラーである。マルセイユでの1年目となった昨シーズンもすでにハイクオリティーを示していたが、今シーズンはさらにスケールアップした。堂々たる立ち居振る舞いで、見事主力にのし上がったのだ。
 
 その闘士としてのメンタリティーは、エネルギッシュでアグレッシブ。決して諦めない。まさに今シーズンのOM(マルセイユの愛称)の戦いぶりを象徴している選手で、サカイは手厳しいOMサポーターのハートもしっかり掴んでいる。彼らはユニホームを汗でびっしょり濡らす選手をこよなく愛するからだ。いまやサカイを「養子」のように受け入れている。念を押しておくが、これはノーマルなことではない。
 
 サカイが声価を一気に高めたのは、やはりフランス版クラシコでの活躍だろう。昨年10月21日に行なわれた、パリ・サンジェルマンとの大一番だった。国内最大の宿敵を向こうに回し、出色の出来を披露したことで、人気と知名度を飛躍的に高めたのである。対峙したネイマールを無力化したのだから当然だろう。ブラジル代表の至宝とのマッチアップで、躊躇うことなく勇猛果敢に立ち向かい、苛立ったネイマールはすっかり冷静さを失なって、挙げ句の果てにレッドカードを突き付けられたのだ。

 
 重要なエピソードはほかにもある。今年の4月12日、ヨーロッパリーグ準々決勝のセカンドレグだ。
 
 マルセイユが5-2の勝利を飾ったRBライプツィヒとの一戦で、サカイはゴールを決めている。その日は彼の28歳の誕生日だったため、チームメイトたちも監督も、自分のことのように喜びを爆発させていた。実に印象深い光景だったのだ。
 
「ヒロキが見せているパーソナリティーと同じものを、全員が持ち続けなければいけない!」
 
 リュディ・ガルシア監督が試合後、こう宣言したほどだった。指揮官はしばしば、サカイに対して「君にはアシストする権利もゴールする権利もあるのだ。貪欲になれ」と語りかけてきた。換言するなら、「みずからの職務の範疇を超えていけ、超越せよ」ということだ。
 
 職務に忠実なあまり、そこから良い意味で逸脱できないのが、一般的に言って日本人選手に共通する弱点である。サカイも当初はその典型だった。チーム内のディシプリン(規律)に関してはこれ以上ないほどのレベルでこなすが、自信でイニシアチブを取れという指示に対しては、これまでそうしたシチュエーションに身を置いてこなかったからか、どうしても渋りがちだった。
 
 それがどうだ。いまのサカイにはそうした消極的な印象は微塵も感じられず、攻守両面で溌溂と全力でプレーしている。リーグアン屈指のサイドバックのひとりへと台頭したのだ。
 

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