“努力の跡は語らない”女子アジア杯連覇の立役者が、名門校の逸材から“超大物”に化けるまで

2018年04月30日 西森彰

高校時代の恩師は「言うことを素直に聞いてプレーに活かす子が伸びる」と言うが…

アジアカップの準決勝、決勝で3発を決めた横山。写真は、左からAC長野パルセイロ時代、現在のなでしこジャパン、準優勝したU-17女子W杯。(C) Getty Images

「なでしこジャパン」のジョーカー、横山久美の母校は、一昨年度の全日本高校女子サッカー選手権で初優勝した東京都の名門・十文字高だ。横山の在学時から現在まで、同校を指揮するのが石山隆之監督である。先月の「めぬまカップ」(シーズン初頭に埼玉県内で行なわれるフェスティバル)では、試合で出た反省点と課題を、およそ30分間のミーティングで選手に伝えた。

 時折、熱を帯びたスピーチを終えたあと、近くで眺めていた筆者に気づくと「ずっと見ていたの?」と照れ臭そうにしながら、続けた。
「だいたい、こちらの言うことを素直に聞いて、プレーに活かす子が伸びますね。ただ、ひとりだけ、自分の主張を貫き通して、超大物に育ったのがいるんです。そう、横山久美ですよ」

 十文字在学時に参加した2010年のU-17女子ワールドカップ(トリニダード・トバゴ)では5得点(得点ランキング3位)を挙げ、準優勝の原動力となっている。準決勝の北朝鮮戦で5人の守備ブロックをすり抜けて決めたシュートは、今でも語り草だ。

 代表だけでなく、横山は、十文字の躍進にも大きく貢献した。時に厳しく指導しながらも、横山のタレント性を認めていた石山監督が、彼女の個性を発揮できるチーム作りをしていったからだ。全国大会での3位入賞は、十文字にとって、後の日本一へとつながるマイルストーンにもなった。

 石山監督は「今や、彼女は、なでしこジャパンのエースでしょう。『恐れ入りました、参りました』ですよ」と嬉しそうに、口にした。
 

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