【現地発】メッシと熱い抱擁を交わした瞬間、だれもがイニエスタの決意の固さを悟った

2018年04月27日 エル・パイス紙

だからイニエスタのゴールは美しい。

コパ・デル・レイ決勝でハイパフォーマンスを見せたイニエスタ。現地時間4月27日、本人の口から正式に退団が発表される。 (C)Getty Images

「時が来た。いま、自分に必要な決断を下すだけの幅広い知識や経験は身に付けてきたつもりだ」

 バルセロナがセビージャと対戦し、5-0で勝利を収めたコパ・デル・レイ決勝後のミックスゾーンで、アンドレス・イニエスタはこう語った。

 直前に父親のホセ・アントニオが『Cadena Ser』のラジオスポーツ番組「El larguero(エル・ラルゲロ)」で息子が下す決断は「厳しいものになる」と、退団を既成事実として認めるような発言を行なっていたが、イニエスタ自身は簡潔に話すにとどまった。

 この日、イニエスタは会場となったワンダ・メトロポリターノ・スタジアムの観客から盛大な拍手を受けた。しかし、それによって彼が考えを改めることはないだろう。むしろこのコパ決勝での記憶に残るパフォーマンスによって、退団の決意をさらに固くしたはずだ。
 
 昨年9月の時点で、今シーズン限りでバルセロナを退団する自身の姿を想像していたイニエスタは、このような形で有終の美を飾ることを夢見ていた。

 2008‐2009シーズンのCL準決勝第2レグ、チェルシー戦でのチームを決勝の舞台に導く劇的同点弾、2010年ワールドカップ決勝の延長後半に決めた決勝弾と、これまでいくつか記憶に残るゴールを挙げてきたイニエスタは、「バルサで戦う最後のファイナル」という、自身にとってのメモリアルゲームでも印象深いゴールを決めた。

 もともと得点力が高いとは言えないイニエスタのゴールには、産みの苦しみという付加価値がつねに伴う。しかし、逆にそれが印象深さ、インパクトの強さをもたらす効果を果たし、だからこそ美しい。

 前述のチェルシー戦後、当時バルサを率いていたジョゼップ・グアルディオラは、「イニエスタの右足には、バルセロニスタの魂が乗り移っていた」と表現した。ワールドカップの決勝もジリジリした試合展開ののちの待望のゴールという点で状況は同じだった。

 そして退団を胸に秘め、目の前の一つひとつの試合が最後になるかもしれないという強い覚悟で今シーズンをプレーしつづけたイニエスタが、特別な思いを持ってこの決勝戦に臨んでいたことは想像に難くない。

 コパの決勝で決めたゴールは、チェルシー戦やワールドカップ決勝で決めたような劇的なものではなかったかもしれない。しかし相手GKダビド・ソリアを鋭いフェイクでかわして冷静に右足で流し込んだ一撃は、「待望のゴール」という点では前述のふたつに匹敵する価値があった。この日、スタジアムに家族全員を招待していたイニエスタにとって、感慨ひとしおのゴールとなった。
 

次ページメッシは絶大な信頼を寄せていた。

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