難点だらけのFWだったパトリックはなぜ首位広島を牽引する存在にまで進化できたのか?

2018年04月26日 大島和人

城福監督のもとでプレーした甲府時代は抜群のフィジカルを持ちながら「決定力」が弱みに

今季ここまで得点ランク2位につける6ゴールを挙げるパトリック。その長所を活かすチーム作りができている。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 サンフレッチェ広島は25日のFC東京戦で今季初黒星を喫したが、それでも2位と勝点6差で依然、首位を独走している。その躍進の立役者となっているのが、今季すでに6得点を決めているパトリックだ。


 パトリックは2013年に来日し、川崎フロンターレへ加入。しかし風間八宏監督(当時)のスタイルにフィットせず、シーズン半ばにヴァンフォーレ甲府へ移った。

 パトリックは8連敗を記録するなど、降格の危機にあった甲府を救う活躍をした。 当時の監督は広島で再会する城福浩。彼は5-4-1の1トップにパトリックを配置し、その強みを生かした。

 パトリックは189センチの長身で、跳躍力とパワーを兼備している。さらに圧倒的なスプリント力を持ち、繰り返しダッシュできるフィットネスもあった。彼が見せていた目立たなくとも重要な貢献は「セットプレーの守備」で、CKやFKをエリア外へ弾く能力は驚異的に高かった。

 ただし当時のパトリックには難点もあった。ロングカウンターの先兵として素晴らしいスプリント、ドリブルを見せる一方で「ゴールを決める」部分が大きな弱みだった。甲府時代の彼は16試合で73本のシュートを放ちながら、得点は5ゴールのみ。「6.8%」という決定率はストライカーの数字とは言えないだろう。

 また、このブラジリアンFWは狭いスペースでボールを動かせるタイプでもない。ボールを失えば相手のカウンターにつながる状況で「持たせる」ことも禁物で、必然的に一人で仕掛けるアクションが増えていた。
 
 しかしパトリックは2014年の途中に加入したG大阪で、甲府時代のような「穴」を感じさせないプレーを見せる。城福監督はその時期、パトリックの活躍をこう分析していた。

「G大阪で彼のウィーク(短所)が出ず、ストロング(長所)しか出ていない理由は、彼以外にある。他の全員にポゼッションできるクオリティがあって、パトリックはG大阪の持っていないピースを持っていた。だから素晴らしいバランスのチームになった」
 

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