5レーン理論にインナーラップ… “吉田ヴァンフォーレ” 新機軸の発想と完成度

2018年02月10日 大島和人

相手のプレスからの回避・開放は想像以上にスムーズ。

甲府でのべ6年目を迎えるアカデミー出身の堀米は、背番号を昨季の11番から7番に変えて新シーズンに臨む。写真:徳原隆元

 ヴァンフォーレ甲府は宮崎キャンプでトレーニングマッチ(TM)を4試合行ない、3勝1分けで終えている。J2の3クラブ(徳島ヴォルティス、FC岐阜、FC町田ゼルビア)とJFLのFC今治を相手に、様々な形を試した13日間の日程だった。甲府が6年ぶりのJ2をどう戦うかというイメージも見えてきた。

 
 昨季の甲府はほぼ1年を通して5-3-2のフォーメーションで戦った。吉田達磨監督は「去年は5-3-2を使う気が全くなかった。でもどうしても上手く点が取れない、何かハマらないなというので、(宮崎キャンプの最終TMだった)仙台戦が終わってから決めた」と振り返る。5-4-1の継続を前提としていたチームが、キャンプ期間の試行錯誤を通して別の形に辿り着いた。
 
 今季の甲府は1次キャンプで、まず3-4-2-1の布陣を試した。しかし宮崎キャンプ最終戦、1次キャンプから通算6試合目の町田戦(1〇0)を、甲府は45分×4本の大半を4-1-4-1の布陣で戦った。
 
 4-1-4-1は吉田監督が柏レイソルの育成組織とトップを指導している時期に常用していた、彼の「十八番」ともいうべき形。J1ではボールを持たず耐える戦いが前提となっていた甲府だがJ2では持つ、持たされる展開が増えるが、そういう状況で有用な布陣だろう。
 
 広く均等に人を配置してボールを動かし、相手の外へのベクトルを逆用して中を突く――。甲府はそんなパス回しを宮崎キャンプの最後に見せていた。
 
 町田はハイプレスを強みとするチームだが、1、2本目で甲府のアンカーに入った窪田良は「僕らが上手く回していたので(町田がプレスに)来られなくなった部分もあると思う」とボールのスムーズな動きを振り返る。
 
 新加入のCBビョン・ジュンボンはスキルが高く、空いたスペースにボールを流し込んでいた。GK河田晃兵も昨年にはなかった頻度でボールを受けていた。プレスの回避、開放は昨季から取り組んでいた部分でもあるが、想像以上にスムーズだった。
 
 吉田監督も180分で1点に留まった得点力という課題に苦言を呈しつつ、「思ったよりプレッシャーを回避して、空いているスペースを作ったり使ったり、いい攻撃をするシーンが多かった」と収穫を口にしていた。

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