日本を救った中村航輔は、川島永嗣の背中にどこまで迫れるのか

2017年12月11日 清水英斗

インスタントチームの日本が苦戦するのは当然だった。

GK中村は好プレーを披露。再三のファインセーブでピンチをしのいだ。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 1、2回だけなら個人のひらめきか。しかし、2回も3回も、4回も5回も続いたら、チーム戦術と考えるしかない。
 
 北朝鮮のGKリ・ミョングクは、キャッチしたボールを全部高く蹴り上げ、宇宙開発のような配球を続けた。前線に人数が揃っていなくても、お構いなし。ほぼ全部蹴った。日本が帰陣する前に。
 
 一般的にGKからの配球は、グラウンダーか、距離が長ければライナーで届けるのがセオリーだ。そのほうが味方にとって受けやすい。そういう意味では北朝鮮のGKは、最低の配球ばかり。しかし、受けづらいボールは、クリアしづらいボールでもある。このボールの滞空時間を利用し、北朝鮮は1トップと分断されている中盤が駆け上がって行く。コーチングエリアに目を移すと、ヨルン・アンデルセン監督は腕を振り回す。まるで長打が出た時の三塁コーチャーのよう。つまり得点チャンス、と捉えているわけだ。
 
 アンデルセン監督は"日本の弱点"についてコメントを控えたが、推測はできる。空中戦の技術が低いこと、不規則なボールの処理を失敗しやすいこと、こぼれ球に対して中盤のプレスバックが遅れること。GKの配球に限らず、セットプレーやサイド攻撃でも、北朝鮮はフィフティ・フィフティのボールを蹴り、こぼれ球に対してポジションを取る。特にコーナーキック後のカウンター、あるいはサイドチェンジに対する競り合いなど、日本のサイドバックが競り合う局面では、より危険が大きかった。
 
「平日に1日2回トレーニングできる契約を結んだ」とアンデルセン監督が語るように、北朝鮮は攻守の連係が良く、対策も整理されていた。インスタントチームの日本が苦戦するのも無理はない。
 
 難しい試合だった。日本を救ったのは、間違いなくGK中村航輔だ。
 
 25分にフリーキックからワンタッチシュートを打たれた場面のローリング・セーブを皮切りに、69分にはヘディングシュートをダイビング・セーブ。83分にも、裏へ飛び出されてのワンタッチシュートを止めた。GKは結果を変えられるポジション。中村は日本の結果を変えた。

次ページ代表デビュー戦でここまで堂々とやれる図太さも、GKには欠かせない。

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