伊藤達哉に久保建英、堂安律… 高い技術力を持つ未来のA代表に相応しい戦術は?

2017年12月12日 清水英斗

注目のドリブラー伊藤達哉。

東京五輪世代以下には、狭いスペースでの突破や連係を得意とするアタッカーが多い。なかでもハンブルクの伊藤は、緩急を付けたドリブルが魅力の〝面白い選手〞だ。(C)Getty Images

 身長163センチの小さな日本人がボールを持つたび、スタジアムが沸騰する。小気味良 いドリブルで敵陣を切り裂く〝シューティングスター〞─。かつての香川真司と同じ愛称で呼ばれるハンブルク所属の20歳、伊藤達哉が注目を集めている。
 
 柏レイソルで育ち、18歳でハンブルクの下部組織に加わると、今季のブンデスリーガ6節、レバークーゼン戦でトップデビュー。以降、5試合連続出場中だ(先発は2試合)。日本での知名度も低く、まさしく流星のごとく現われたタレントである。
 
 最大の特長はドリブル。小刻みなボールタッチで敵DFに突っかけ、相手が足を止めた瞬間、急激なブーストで置き去りにする。ブラジルというより、アルゼンチン風味だ。複雑なフェイントは交えず、緩急を付けてタイミングの〝間〞を突き、シンプルに抜く。
 
 その急加速、スピードの変化にブンデスリーガのDFが付いていけない。彼らは相手にリズムを合わせるのが下手だ。ドーンとぶち当たってボールを奪うのは得意だが、下がりながら駆け引きをして、勢いを吸収する守備ができない。だから伊藤は面白いように抜いて行く。もっとも、ドリブルが上手いだけならすぐに行き詰まったかもしれないが、伊藤は味方とのコンビネーションで崩す術も心得ている。目線を上げたドリブルから、好機を逃さずワンツーで仕掛け、スルーパスを繰り出す。狭いスペースでプレッシャーを受けてもまったく焦らず、サッとボールを味方に預けたり、キュッとターンしてエリア内に侵入したり、自由自在。ドリブラーながら高度な状況判断力を兼ね備えたスタイルは、さすが柏育ちといったところか。
 
 一方で課題は、先発した7節のブレーメン戦で後半開始早々の53分に足が攣って交代を余儀なくされるなど、90分間戦えるフィジカルが備わっていないこと。マルクス・ギスド ル監督は、ラスト30分に限定したスーパーサブ起用も仄めかしている。
 
 もうひとつは、相手を背負えないこと。10節のヘルタ・ベルリン戦では身体を入れたにもかかわらず、後ろからタックルされ、ノーファウルでボールを奪われるシーンが散見さ れた。前を向いて仕掛ければDFをきりきり舞いさせるが、敵を背負うのは苦手。チームが押し込まれた状況が続くとそういうプレーが多くなるので、伊藤の良さが活きない。
 
 とはいえ、引いた守備ブロックを崩す〝弾丸〞として、かなり面白い選手であるのは確かだ。すでに欧州生活も3年目。今季の活躍次第では、まさかのロシア行きもなくはない。

次ページ東京五輪世代にはどんな戦術が相応しいのか。

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