甲府は1年でJ1復帰できるのか?ピッチ内外の現状を踏まえて再建の道を探る

2017年12月04日 大島和人

シーズンを通した総得点は「23」。これは川崎の小林悠が個人で挙げたゴール数と同じだ。

最終節で勝点3を得たものの、清水も勝利して甲府の降格が決まった。(C)J.LEAGUE PHOTOS

「必ず1年でJ1に復帰します」
 
 甲府の輿水順雄社長は、試合後のセレモニーでサポーターにそう誓っていた。
 
 しかし、J1復帰に向けた道のりは険しいものになる。甲府の年間予算は15億円程度で、J1最少の強化予算でやり繰りを続けてきた。来季はJ2に降格することでスポンサー料、分配金などの減少が前提となる。クラブ首脳などのコメントから仮に2018年の予算が12億円と想定すると、これはJ2でも中程度の規模だ。甲府はJ2においてもチャレンジャーの立ち位置になる。
 
 また、来季は昇格プレーオフの制度が変わり、J1の16位クラブとの入替戦が導入されることで、昇格枠は「3」から「2.5」に減る。単純に考えてそれだけ可能性は小さくなる。加えてルヴァンカップの方式変更によりJ2から甲府と新潟が参加することになったが、これも経営的には重荷となり得る要素だ。
 
 ともあれ甲府は12月2日のJ1最終節は勝利で飾った。5分と提示されたアディショナルタイムの最後にリンスがゴールを決める劇的な展開で、仙台を1-0と下した。清水が仮に「引き分け以下」なら甲府は15位に浮上し、逆転で残留が決まっていた。しかし清水は神戸に3-1で競り勝ち、勝点差は「2」のまま変わらなかった。14位・清水が勝点34で、15位・広島は勝点33――。甲府は勝点32で届かなかった。
 
 フロントも含めてチームの方針は一貫していた。開幕前に佐久間悟GM、吉田達磨監督が強調していた注力点は守備の強化だが、甲府は失点数を昨季の「58」から今季は「39」に減らしている。昨季はリーグで2番目に多い失点を喫していたチームが、今季は守備に限れば「6位」にジャンプアップした。
 
 一方でシーズンを通した総得点は「23」とJ1最少に止まっている。これは小林悠(川崎)が個人で挙げたゴール数と同じだ。
 
 点が欲しい時に取れない――。もちろん取りたい時に必ず取れるチームなど世界にひとつもないのだが、オプションがない、あるいは可能性の高い攻めができない、という現実はもどかしかった。甲府はいわゆる"飛び道具"的なものを用意できず、試合運びの幅が狭くなっていた。

次ページセットプレーは5得点の16失点と大赤字。

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