V・ファーレン躍進の陰に敏腕トップあり! 髙田明社長が描き出す「Jクラブの新たなカタチ」

2017年11月10日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

V・ファーレン長崎/髙田明社長インタビュー(前編)

人差し指で「1」と示したのは、J1昇格への熱き想い。稀代の起業家・髙田社長が、Jリーグに新風を吹き込む! (C)SOCCER DIGEST

 取材の待ち合わせ場所は、みらい長崎ココウォークにあるクラブショップだった。
 
 V・ファーレン長崎の髙田明社長とは初対面だが、もちろん、こちらはよく存じ上げている。2か月ほど前、偶然にも筋トレマシーンを購入した「ジャパネットたかた」の創業者。現在は会社経営の第一線から退いたが、商品を紹介する時のあの独特の語り口調と圧倒的な存在感は忘れようがない。日本でもっとも有名な起業家のひとりだ。
 
 しばらくすると、玄関付近に髙田社長の姿が見えた。挨拶しようと名刺を用意していると、こちらには気づいていなかったのだろう、一目散にショップの店員さんの元に駆け寄る。「いつもお疲れさまです。ありがとうねー。もうどれくらいになるのかな?」と雑談。まったく偉ぶることなく、極端なほどフランク。対峙する者をいとも簡単に引き込んでいく。イメージ通りの人物だった。
 
「え? 見ていました? ははは。いつもあんな感じですよ。自然体でね。みんなと一体になるのが大事ですから。企業経営もそうやってきたし、これまでいろんな方と出会いましたが、やはりそこが一番楽しい。ひととひとが繋がり、続いていく。とっても大事だから、ビジネスでもスポーツでも。とくに最初はね」
 
 経営難に陥ったV・ファーレンをジャパネットホールディングスが子会社化したのは、今年4月のことだった。地元のJクラブを立て直さんと腰を上げ、代表取締役社長に就任したのが髙田氏だ。とにかく、忙しい。この日もスポンサー周りなど分刻みのスケジュールで、取材場所やスタート時間の変更もあった。
 
 缶コーヒーをぷしゅっと開け、「ひと仕事してきたんで、ちょっと自分だけ失礼しますよ」と口につける。「はい、お願いします!」と切り替え、まずは就任からの半年間を振り返ってもらった。
 
「ひとつのサッカークラブとしては非常に厳しい状態での引き継ぎでしたし、いまでも改善に追われている毎日です。そのなかで早急に整備しなければいけなかったのが、選手にとっての環境作り。お給料をもらえるのかとか、ゴタゴタがあったことに対しての心配事や不安をなくしてあげなければと。気持ちを切り替えられたことで、従来持っていた力をフルに出せるようになったのではないでしょうか。ビジネスでも政治でもスポーツでも、この気持ちってのが大事なんですね」
 
 高木琢也監督率いるチームは、昨季のJ2リーグで15位と低迷。件の経営難によりオフでの補強に資金は注ぎ込めず、戦力値が上がったとは言い難い。それでもチームは、新助っ人のFWファンマやGK増田卓也、MF島田譲、DF乾大知、FW澤田崇らが躍動し、望外の快進撃を続けた。
 
「経営者が替わったから、5年待ってもらえるという話ではないと思うんです。県民のみなさんの支持を得るには、1、2年である程度の強化をしていかないと、振り向いてもらえない。そういう意味では、チームが頑張ってくれているのがなにより心強い。上位に食い込んでいる現状には大変満足しています。就任当初、高木監督に会ってまず話したのは、『僕がキーパーやりますよ』と(笑)。それは冗談でしたが、練習に励んで結果を出すという本業に集中してください。勝つチームにしてほしい、とお願いしました」
 

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