【香川密着】「変化」と向き合う戦いの証とは――

2014年04月18日 田嶋コウスケ

攻撃面での物足りなさを口に。

守備をこなしながら、いかに前線でインパクトを残すか。香川の今シーズンは試行錯誤のなかで進んでいった。 (C) Getty Images

「ドルトムント時代に比べると、カガワはプレースタイルが変わったんじゃないか?」

 バイエルンと対戦したチャンピオンズ・リーグ準々決勝・第2レグが終わった直後の取材エリアで、英紙『サンデー・タイムズ』のジョナサン・ノースクロフト記者から、こんな指摘を受けた。ドイツのミュンヘンまで駆けつけた同記者は、香川真司の変化について次のように話す。

「マンチェスター・ユナイテッドの出場選手のなかで、カガワは質の高いプレーを見せたひとりだと思う。自陣深くまで下がって対峙するアリエン・ロッベンをケアし、最終ラインをしっかりサポートしていた。攻撃面でもカウンターの起点になっていたと思う。デイビッド・モイーズ監督の指示を忠実に守り、ディフェンス重視のプレーを徹底していたのだろう。だがユナイテッドに加入してから、ドルトムントで放っていた最高の輝きは見せていない。とくに、モイーズ監督が就任した今シーズンは、適応に苦しんでいる」

 優勝候補の呼び声が高いバイエルンに対し、ユナイテッドは自陣深くに守備ブロックを敷いて抗戦した。左MFに入った香川も例に漏れず、自陣ペナルティーエリア手前まで引いて守備に奔走。マイボールになると、全力で前線に走ってフィニッシュに絡もうとした。

 攻守両面で貢献度の高かった香川に対し、英紙『デイリー・テレグラフ』は8点(10点満点)をつけたうえで、「キレのあるパスと賢い動きで今シーズン最高のプレーを見せた」と高い評価を与えた。

 だが、試合後の本人は、「(チームとして)うまく守備ができていた」と振り返りながらも、「もう少しボールをもらえる回数を増やしたかった」と個人のプレー、とくに攻撃面での物足りなさを口にした。

 守備のタスクをこなしながら、いかに前線でインパクトを残すか──。

 ディフェンスを重視するモイーズ監督の下、今シーズンの香川は組織の中でいかに自分の持ち味を発揮すべきか、その試行錯誤を続けてきたように思う。

次ページ試合後のコメントから伝わる葛藤。

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