英サッカー専門誌の熟練記者は「ACL暴行事件」をどう捉え、どう切り取るのか

2017年06月09日 マイケル・プラストウ

ACLは成熟した大会になりつつあったが。

浦和vs済州戦で起こった暴行事件。今回は日本在住37年のプラストウ記者にオピニオンを訊いた。(C)SOCCER DIGEST

 正直、驚いた。
 
 これまでもサッカーのゲーム中に暴行事件がなかったわけではない。劇的な形で敗北を喫すると、感情を抑えきれなくなる場合は多々ある。とはいえ、そんな些細な理由で蛮行に及んでいいものだろうか。子どもでもあんな真似はしない。あれしきのことで暴力を振るっていては、プロサッカー界は暗澹たる世界に成り下がってしまう。
 
 アジアチャンピオンズ・リーグの浦和レッズ対済州ユナイテッド戦。まずはなにより、素晴らしい試合だった。レッズは0-2の第1レグから見事に3点を奪ってひっくり返し、スタジアムは興奮に包まれた。まさにカップ戦ならではの醍醐味だったし、存分に堪能させてもらった。ナイスゲームをした両チームに、エールを贈りたいと思う。
 
 ではなぜ、終了間際にあのような事態に見舞われたのか。
 
 試合中、暴力的なプレーやそれを誘発するような場面はほとんど見受けられなかった。審判のミスによる不公平さもなく、試合終了のあの間際まで、密度の濃いゲームが繰り広げられていた。済州のチョ・ソンファン監督は「勝者のマナー」について言及し、レッズの選手の挑発行為を非難したが、少なくとも映像で確認するかぎり、彼らはいたってノーマルに振る舞っていたように思う。時間稼ぎは試合の一部だ。誰だってやる。済州は第1レグでの2点のリードを守るべく、試合開始からあからさまにディフェンシブな戦いをしていた。
 
 ACLはひと昔前とは異なり、いまや成熟した大会になりつつある。そう感じはじめていた。それだけに、かくも軽率かつ未熟な行動でイメージを損なわれたのが残念でならない。まだ発展途上ということなのだろう。

次ページレッズのサポーターに圧倒されたのかもしれない。

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