北朝鮮の知られざる「エリート育成法」とは? セリエAで初ゴールを奪うFWも!

2017年04月15日 片野道郎

U-17ワールドカップにも出場していたハン。

北朝鮮選手としては欧州5大リーグで初めて出場とゴールの記録を残したハン・グァンソン。イタリアでも注目の的に。(C)Getty Images

 4月9日のセリエA第31節、カリアリ対トリノ戦で81分にマルコ・サウに代わって途中出場し、ロスタイムに1点差に詰め寄るゴールを決めた北朝鮮U-19代表のハン・グァンソン。セリエAはもちろん欧州5大リーグで北朝鮮人選手のゴールは史上初だった。
 
 カリアリのトレーニング(プリマベーラ=U-19とトップチーム)にテスト生扱いで参加するとすぐに高い評価を受け、育成年代のプロ予備軍選手(ジョヴァニ・ディ・セリエ=アマチュア扱い)として選手登録されたのが、この2月末のこと。3月にはプリマベーラの一員として、U-19年代の重要な国際トーナメント「ヴィアレッジョ・カップ」に参加。デビュー戦となったグループステージのパルマ戦で絵に描いたようなバイシクルシュートを決めて、集まったスカウトたちを驚かせる。
 
 このトーナメントで3試合に出場するのと並行して、3月19日のラツィオ戦からはトップチームにも招集され、4月2日のパレルモ戦終盤にセリエAデビューを飾ると、続くトリノ戦で初ゴール。突如現れた超新星として一躍、イタリア中から注目を集める存在になった。
 
 とはいえこのハン、これまでまったく無名の存在だったというわけではない。2014年のU-16アジア選手権ではキャプテン&エースとして参戦し、6試合で4得点を挙げて優勝に貢献。翌年のU-17ワールドカップでも、グループステージを突破して決勝トーナメント1回戦でマリに敗れるまでの4試合すべてに出場、1ゴールを決めている。
 
 これらの大会での活躍を通じてスカウトたちの注目を集めたハンは、英紙『ガーディアン』の「世界で最も才能あるU-18フットボーラー50人」のひとりに選ばれた。
 
 フリーランスのタレントスカウトで、世界中の無名ながら興味深いプレーヤーを発掘してクラブへの売り込みなどを行っているジュリオ・ダレッサンドロは、自らが運営するサイト『D'Alessandro Scouting』でハンを取り上げ、次のように紹介している。
 
「北朝鮮の非常に興味深いストライカー。傑出したスピードと優れたドリブル突破、高精度のボールコントロール。高い頻度で危険なポジションに入り込む術を身につけている。ミドルシュートとラストパスに優れ、ヘディングも強力。U-17ワールドカップを通して、彼はそのジャンプ力によって完全な制空権を握っていた。強いパーソナリティーの持ち主だ」

次ページスペインとイタリアのアカデミーに複数の若手を送り込む。

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