これぞスペイン!? 代表戦でのビデオ判定をめぐる論争が、いつの間にかマドリーvsバルサの舌戦へ…

2017年03月30日 工藤拓

VARがなければスペインの勝利はなく、1-1で引き分けていた。

注目されたエムバペを止めにかかるピケ(3番)。試合後は“売られた喧嘩を買い”、恒例とも言える問題発言で物議を醸した。後方には、引き合いに出されたラモスの姿……。 (C) Getty Images

 3月28日(現地時間)に行なわれたフランス対スペインの親善試合は、アウェーのスペインが2-0の勝利を収めた。
 
 戦前に注目を集めたモナコの新星キリアン・エムバペ、途中出場でPK獲得と代表初ゴールを決める活躍を見せたジェラール・デウロフェウと並んで、この試合で話題となったのは、試験導入された「ビデオアシスタントレフェリー(VAR)」だ。
 
 昨年12月のクラブワールドカップでは悪い意味で注目が集まったビデオ判定システム「VAR」だが、この日はその真価を発揮した。
 
 48分にアントワーヌ・グリエーズマンのゴールが決まった直後にオフサイドがあったことを主審に知らせると、77分には副審がオフサイドの旗を上げたデウロフェウのゴールを有効と判定したのである。
 
 もし、このふたつのゴールシーンでVARの判定が"誤審"を指摘していなければ、試合は2-0でなく、1-1で終わっていたことになる。
 
 しかも、そのふたつの判定がいずれもスペインに有利な結果となったことで、試合後、「ラ・ロハ(スペイン代表の愛称)」の選手からは、VAR導入に肯定的な意見が相次いだ。
 
「念のために決めておいたけど、最初はオフサイドで取り消されたと思った。判定まで待たされたけど、最終的にゴールが認められて良かった」
 
 こう語ったのは、ゴールが認められたデウロフェウ。またジェラール・ピケも、テクノロジーの導入を歓迎している。
 
「レフェリーはミスを犯すものだから、(VARは)彼らの助けになる。最初は判定を待つことに惑わされるだろうけど、改善されていくはずだ。これまで何度、誤審に泣かされ、不満を口にしてきたことか。もう、それがなくなるんだからね」
 
 一方、敗れたフランス側からは不満の声も聞かれた。
 
「最悪なのは、判定を待たされること。自分はゴールを喜んだ後に取り消され、デウロフェウは喜んで良いかどうか、判定を待たなければならなかった。それでフットボールの良さが、少しばかり失われてしまうのが残念だ」
 
 ゴールが認められなかったグリエーズマンはこう語り、VAR導入に賛成票を入れるかどうかを問われると、「自分は投票しない」と答えている。
 
 またディディエ・デシャン監督は、「PKの判定には不服だ。VARで接触の有無を確認すべきだった」と、VARを通さずに主審が判断を下したスペインのPKを引き合いに出し、「新たな技術なだけに、どのようなシーンで用いるべきかを明確化する必要がある」と注文を出していた。

次ページ過去にVARがあったなら…そこから始まったライバル同士の口撃。

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