【現地発】なぜメッシに厳罰が下ったのか? 協会は「陰謀論」もあるFIFAを提訴

2017年03月30日 チヅル・デ・ガルシア

大統領も動き国事マターとなったメッシへの処分。

チリ戦での言動により出場停止処分に追い込まれたメッシ。言うまでもなくアルゼンチンにとって代えの利かない存在だけに、今後の対応が気になるところだ。 (C) REUTERS/AFLO

 リオネル・メッシが3月23日のチリ戦(ロシア・ワールドカップ南米予選第13節)で副審に向かって暴言を吐き、28日にFIFA(国際サッカー連盟)から予選4試合の出場停止処分を受けたことは、世界中に大きな衝撃をもたらした。
 
 14節終了時点でオセアニア地区代表とのプレーオフ圏となる5位に甘んじるアルゼンチンにとっては、ロシア行きに黄信号がともる一大事だ。
 
 なにせ今回の予選において、アルゼンチンの勝率はメッシの出場時が83.3%、欠場時が14.3%と大袈裟なほど異なる。処分の可能性が浮上してからというもの、国内ではどのメディアもこの話題に集中し、マウリシオ・マクリ大統領もメッシに連帯を示すメッセージを寄せるほどの国事マターとなった。
 
 今回の一件でアルゼンチンの人々が抱いた感情は、処分そのものへの失望だけではない。それよりも、審査開始から処分決定に至るまでのあまりの慌しさと不合理さから生じる懐疑心の方が大きかったと言っていい。
 
 メッシの行為が審査にかけられ、制裁の対象になるという通達がFIFAからAFA(アルゼンチン・サッカー協会)に届いたのは3月27日の午後。チリ戦の4日後、第14節のボリビア戦の前日だった。
 
 その文書には、証拠映像からメッシが副審に「侮辱的な言葉」を発した事実が確認されたこと、審判団からはその事実に関する報告がなかったためFIFAが改めて主審以下全員に状況説明を求めたこと、そして指定された時間までに免責申請書を提出することなどが記載されていた。
 
 そこに記されていたブラジル国籍の審判団による供述は、副審を除く全員が「(メッシによる)攻撃的な言葉は一切聞いていない」というもので一致している。
 
 だが、実際にメッシから抗議を受けた副審は、「手を振り上げながら文句を言っていたのは見えたが、言葉の意味はわからなかった。あとになって映像を見て侮辱だったとわかった」と説明していたため、FIFAが「審判員に対する侮辱行為があった」と判断。そこから審査が始まった。
 
 問題は、代表チームのマネージャーであるマルセロ・ティネリがこの文書を確認してから、免責申請書提出までに与えられた時間がたった30分しかないことだった。
 
 FIFAから通達が届いた時、アルゼンチン代表一行はボリビア第2の都市サンタクルスに向けて移動中だった。試合の前日(しかも夕刻)、アウェー会場に向かっている選手と協会関係者に書類作成を要求する理不尽にティネリは困惑したが、不平を述べている余裕はない。即時にFIFAに提出時間の延長を要求し、ブエノスアイレスにいるAFAの弁護士に連絡して免責申請書の作成を開始したのだ。

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