【小宮良之の日本サッカー兵法書】1+1が2以上になる「セット」がJクラブにどれだけ存在するか!?

2017年03月10日 小宮良之

お互いが呼吸を合わせることによって作動する動きのセット回路。

強い鹿島を構成する大きな要素のひとつであるサイドの「セット」。攻守に安定感をもたらしている。写真は遠藤。 写真:田中研治

 サッカーというスポーツには、「ひとつのセット」という感覚がある。
 
 例えば、CBのふたり、2トップ、ダブルボランチ――。相互関係でプレーの精度が決まり、その呼吸が大事になる。
 
 サイドでのプレーも、SBとサイドハーフの「セット」によって機能する場合が少なくない。
 
 SBが駆け上がる場合、サイドハーフはポジションをあまり動かさず、使う側としてフォローに回り、その駆け引きによって深みを作る。
 
 また、サイドハーフが大外に開いてポジションを取った時にはSBが中を使い、逆にサイドハーフが中にポジションを取るならSB大きく外を使うなどして、幅を作り出す。
 
 そうした幾つもの動きの回路は、お互いが呼吸を合わせることによって成立している。
 
 Jリーグの王者、鹿島アントラーズはサイドのセット回路の精度が抜群に高い。
 
 例えば、右MFの遠藤康は左足のスキルが高いが、それ以上にスペースを把握する能力に優れ、右SBの西大伍や伊東幸敏を巧妙に引き出せる。深みと幅を作れることで、攻撃力が増し、守備の破綻も最小限に抑えられるのだ。
 
 一定期間プレーすることで、サイドのセットは成熟してくる。
 
 サガン鳥栖の左サイド、左SBの吉田豊、左ボランチ(インナー)の福田晃斗はコンビとしての呼吸を高め、お互いの持っている以上の力を出せるようになっている。
 
 吉田は今や、Jリーグ最高の左SBと言っても過言ではない。正しいタイミングや連係の積み重ねによって、著しい成長を見せているのだ。
 
 補強ポイントで難しいのは、「能力(あるいは実績)が高い」という触れ込みの選手が、必ずしも足し算にならない点だろう。セットを組ませた時、思ったような成果が見られないことがある。個の力はあっても、組織として「引き算」になってしまうのだ。
 
 サッカーは、あくまで連係によって成り立っている。リオネル・メッシのビッグプレーを生み出すのはアンドレス・イニエスタであり、イニエスタを輝かせるのはセルヒオ・ブスケッツで、その前にはジェラール・ピケ、さらにはGKがいる。

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