【コラム】ラニエリへの「非礼」で全国的人気を失ったレスターは復活できるのか?

2017年02月28日 山中忍

王者の風格は再現されるも、国内ではラニエリに対する「非礼」で人気が下火に。

ヴァーディーの2ゴールでリバプールに勝利したレスター。試合後の選手たちの表情は一様に安堵と笑顔に満ちていた。 (C) Getty Images

 システムは4-4-2。立ち上がりからジェイミー・ヴァーディーが果敢にタックルを仕掛け、2トップの相棒の岡崎慎司も相手GKにまでプレッシャーを掛けに行く。ポゼッションは敵に譲っても、守護神のキャスパー・シュマイケルが最後の砦となり最少失点に留める。
 
 ヴァーディーの一撃必殺カウンターで始まり、3-1で勝利した26節のリバプール戦(2月27日)でレスターは、まさにプレミアリーグ王者となった昨シーズンのリプレイのような素晴らしいパフォーマンスを見せた。
 
 しかし、試合の4日前には降格圏寸前の17位と落ち込んだ責任を問い、指揮官のクラウディオ・ラニエリを切った。この日の勝利でレスターの上空に立ち籠めた暗雲までが一気に消し飛んだわけではない。
 
 ラニエリ解任が発表された2月23日は、『デイリー・メール』紙の見出しを拝借すれば「サッカーが魂を失った日」だ。国内では怒りと悲しみが反応の大半を占めた。
 
 一部メディアでヴァーディーやシュマイケルら主力がラニエリ不信任をフロントに告げたと報じられ、チームは「思い上がった集団が裏切り行為に走った」と見なされた。
 
 助監督のクレイグ・シェイクスピアが暫定指揮を任された途端に今シーズンのベストとも言えるパフォーマンスをし、リーグ後半戦初勝利を飾ったチームにテレビ解説者のガリー・ネビルが「豹変ぶりが理解できない」と意味深に語ったように、前節までのチームの戦闘意欲を疑われても仕方がない。
 
 英国人は礼節を重んじる国民だ。「手抜き」が噂されたチームとラニエリ解雇を決めた経営陣が、サッカーの母国で「史上最大」と評される偉業を成し遂げた優勝監督に「非礼」を働いたと理解され、レスターへの肩入れを止めたとしても不思議はない。
 
 つまりラニエリ解任日は、昨シーズン中にレスターが受けた「全国からの支援」を失った日でもあると言える。

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