【小宮良之の日本サッカー兵法書】試合出場も、移籍も困難……清武を苦しめるリーガの特殊な事情とは!?

2017年01月18日 小宮良之

フロントの評価は高いが試合には出られず…痛し痒しの現状。

日本代表では不可欠な存在となり、2試合連続でゴールも挙げている。現状については清武本人だけでなく、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も、サンパオリ監督ももどかしさを抱いているかもしれない。 (C) Getty Images

 日本代表の中心選手となりつつある清武弘嗣だが、所属するセビージャでは出場機会に恵まれず、今冬での移籍が噂されている。
 
 しかし、リーガ・エスパニョーラでほとんどプレーしていない選手の獲得に、どこも積極的に手を上げているわけではない。デポルティボ行きが浮上したものの、実際は人物照会レベルの話だった。そもそも、デポルティボの外国人枠は埋まったままである。
 
 有力な受け入れ先として、ブンデスリーガのヘルタ・ベルリンなどが候補に挙がったが、セビージャがこれを許す可能性は低い。なぜなら、リーガよりもレベルが低いブンデスリーガに戻ってしまったら、ここまでせっかく順応させてきた努力も水の泡となるからだ。
 
「清武のことはずっとスカウティングしてきたし、今も評価している。彼に必要なのは適応だ。レンタルで出すつもりはない」
 
 セビージャのモンチSDは、ずっとその言葉を繰り返している。
 
 清武にとって、この評価は痛し痒しだろう。出場機会が少ない状態では、否応なく試合勘が鈍る。それは日本代表でのプレーを考えると、大きなマイナスになってしまう。実際、所属クラブで出場数が減った日本代表選手たちは、揃ってフォームを崩している。
 
 では、今の清武はセビージャでポジションを取れるのか?
 
 それは、残念ながら難しい。
 
 攻撃的MFは、サミア・ナスリ、フランコ・バスケス、ビトーロの3人でほぼ不動。パブロ・サラビア、ビセンテ・イボーラは、サイドやボランチなど複数ポジションができるのがアドバンテージになっている。次にホアキン・コレア、ガンソと続くだろうか。
 
 清武は、アタッカーとして8番手(4人くらいの枠で)。今はベンチ入りするのがやっとという状況が続いている。さらに冬の移籍で加入したステバン・ヨベティッチがいきなりレアル・マドリーを下すゴールを叩き込んだこともあり、清武の存在感は薄まる一方だ。
 
「出場機会を求めて移籍を」
 
 そんな考えが頭をよぎるのは当然だろう。
 
 しかし彼の場合、日本代表選手であることがネックになってしまっている。

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