【ミラン番記者】本田圭佑がドーハで「チームの顔」のような扱いを…

2016年12月30日 マルコ・パソット

本田は一人でロッカールームに繋がるトンネルへと歩いていった。

ドーハ入りした際にファンから写真やサインをせがまれた本田。しかし、スーパーカップで出番は訪れなかった。写真:Alberto LINGRIA

 イタリア・スーパーカップ2016――。
 
 12月23日、ミランがドーハの地でユベントスをPK戦の末に下して勝ち取った、実に5半年ぶりのタイトルだ。
 
 このカップも本田圭佑にとっては、さほど大きな慰めにはならないかもしれない。それでも何も無いよりはずっとましだろう。少なくとも、「イタリアでタイトルを勝ち取った」と言うことができるし、将来ミラノでの日々を思い出す際に、嫌なことばかりではなかったと思えるかもしれない。
 
 それにしても、以前からこのコラムで繰り返していることが、日を追うごとにはっきりとしてきている。ミランの調子が良くなればなるほど、本田はチームの端に、つまり指揮官ヴィンチェンツォ・モンテッラの構想の隅に追いやられてしまう、ということだ。
 
 このユーベ戦で本田は公式戦8試合連続のベンチスタート。18分にジョルジョ・キエッリーニが先制点を挙げ、38分にジャコモ・ボナベントゥーラが同点ゴールを決めて、拮抗した展開となった後半と延長戦、そしてPK戦まで試合はもつれたが、背番号10には最後まで出番が訪れなかった。
 
 結果が出ず袋小路にハマりかけていたここ数年の悩みをミランが次々と克服していく中、本田はそのチーム力学の中から弾き出されてしまっているのだ。
 
 新たな旋風を巻き起こしつつあるチームの中心でプレーすることは、選手に大きなやりがいと喜びをもたらすだろう。しかし、本田のようにそれをただ横で眺めているのは、逆にかなり苦しいはずだ。
 
 取材で足を運んだドーハで、私には印象に残るシーンがあった。表彰式の後、首にメダルをかけ、カップを手にした選手たちは、ミラニスタの集うスタンド前に走り、お祭り騒ぎの続きを始めた。
 
 ある者は歌い、ある者はセルフィーで写真を撮り、ある者はカップにくちづけをし、そのままそこで一晩中でも騒いでいそうな勢いだった。
 
 ただ一人を除いては……。それが誰だったかを想像するのは難しくないだろう。チームメイトたちがスタジアムの一角で狂喜しているというのに、本田は笑顔も見せず、一人でロッカールームに繋がるトンネルへと歩いていった。
 
 その明暗のコントラストは半分に割れた月のようにはっきりとしていて、少し悲しく、しかし象徴的なシーンだった。

次ページまるで「ミランの顔」のような扱いで…。

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