【リーガ前半戦総括】バルサがスタイル論争に晒され、セビージャがカメレオン戦術で驚きを提供

2016年12月30日 下村正幸

L・エンリケには「バルサ・スタイルへの裏切り者」という声も…。

バルサはメッシ(左)ら個々のプレーは悪くないが、スタイルに関して批判の対象に。マドリーはコバチッチ(右)など控え選手の奮闘が際立つ。(C)Getty Images

 2014年夏の就任以来、プレーの選択肢を広げることでバルセロナを進化させてきたルイス・エンリケ監督だが、ここにきてその采配がスタイル論争の標的に晒されている。
 
 3節のアラベス戦、7節のセルタ戦で黒星が付くなど、今シーズン序盤の取りこぼしがその前提にあるのは間違いものの、ポゼッション原理主義者からは「バルサ・スタイルへの裏切り者」という声も出ているほどだ。
 
 一方、5年前の就任以来、堅守速攻を掲げてきたアトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネ監督は、下位チーム相手に攻めあぐむ状況を改善ようとアントワーヌ・グリエーズマン、コケ、ヤニック・カラスコといった伸び盛りの若手に加え、ニコラス・ガイタンら新戦力を得た今シーズン、よりポゼッションに比重を置いたスタイルへの転換を試みた。
 
 しかし、強豪相手だと手薄になった守備の隙を突かれる試合が続き、ここにきて戦術上のキーマンであるコケのポジションをサイドに戻すことで、原点回帰の采配を見せている。
 
 同じく守備強化を目的に、数年前は滅多に目にすることがなかった5バックを採用する監督がとりわけ中・下位チームの中で増えているのも、今シーズン前半戦の特徴の一つだ。
 
 こうした傾向は、それぞれのチームが採用するプレースタイルや監督が植え付けた組織力を土台に対戦相手や試合展開に応じて戦い方を変えたり、あるいは攻守の局面に応じてシステムをスライドさせたりする必要性がより高まってきた所作、すなわち戦術の多様化と進化の裏返しでもあるだろう。
 
 現在のリーガにおいてその代表格的存在が、ホルヘ・サンパリオ新監督率いるセビージャであるのは間違いない。基本システムはないに等しく、ポゼッション重視のコンセプトをベースに、システムや選手のポジション・役割を頻繁に変える多様性を武器に、ここまで3位の快進撃を見せる。
 
 サミア・ナスリ、フランコ・バスケス、ビトーロ、マリアーノ、ガブリエル・メルカドなどポリバレントかつ戦術的柔軟性の高い選手を中心に、まさにカメレオン・サッカーを披露し、グッドサプライズを提供している。

次ページ首位マドリーは控え選手を含めた総合力が際立つ。

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