【ミラン番記者】本田圭佑は「孤独」を深めている

2016年12月09日 マルコ・パソット

5試合ぶりの出場でポジティブな報道もあったが…。

クロトーネ戦で5試合ぶりに出番を得た本田。FKから決勝ゴールに絡んだ。(C)Getty Images

 外から客観的に本田圭佑のことを眺めていると、どうしても一つの言葉が浮かんでくる。あまり感じの良い言葉ではないかもしれないが、それでも現時点ではそれ以上最適なワードが思い浮かばない。
 
 その言葉とは、「孤独」だ。
 
 本田はとても孤独な男に見える。それにしても、背番号10の孤独とは、非常に矛盾を感じる。なぜなら背番号10といえば、チームの主役、チームの中心、注目の的と同義語だからだ。もしこれが10年前のミランだったら、背番号10がずっとベンチに座っているなど、一大スキャンダルになっていただろう。
 
 しかし、ヨーロッパ・カップ戦のないシーズンが3年間も続き、監督がクラブ史上で例を見ないほど目まぐるしく交代し、中国資本への身売りが間近という昨今ミランでは、もう何があってもサプライズにはならない。
 
 背番号10がどんな状況に置かれていても、誰がその番号をつけようとも、とくに誰も気にかけない。まあそのことのほうが、より大きな問題な気はするが……。とにかく本田は、かつてないほど孤立しているのだ。
 
 12月4日のクロトーネ戦(セリエA15節)の本田の姿は、それを象徴しているように思えた。実に5試合ぶりに出番を貰い(81分から途中出場)、精力的なプレーを見せたため、ポジティブな報道も数多く見受けられたが、私の目にはそう見えなかった。
 
 86分にジャンルカ・ラパドゥーラが試合を決める勝ち越しゴールを決めた時、ミランの選手たちはみんな、彼の下へと駆け寄った。今夏にミランに入団したイタリア代表ストライカーにとってサン・シーロでのファーストゴールを、誰もが祝福したのだ。
 
 しかし、ラパドゥーラの下に駆け寄らない選手が2人だけいた。一人はスソ、そしてもう一人は……みなさんの想像通り、本田その人だ。
 
 ラパドゥーラが狂喜しながらピッチを駆け回り、チームメイトのハグの嵐に沈むのを、本田は冷静に眺めていた。その間に日本人MFは、スソに近寄って耳元で何かを囁いた。それが、目に見えたことの全てだ。

次ページ誰ひとりとして本田を労うものは…。

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