クローゼはなぜ多くのオファーを蹴って引退したのか? 偉大なるストライカーが描くセカンドキャリア

2016年11月05日 遠藤孝輔

古巣ブレーメンへの復帰説はすぐに消滅していた。

2014年のワールドカップ制覇にも貢献したクローゼ。アメリカや中国などからも熱心なオファーを受けたが、引退を決意した。 (C) Getty Images

「ドイツ代表でこれ以上ない成功を収められた。素晴らしい時間だった」
 
 11月1日、DFB(ドイツサッカー連盟)のホームページを通じて、元ドイツ代表FWのミロスラフ・クローゼが現役引退を発表した。1999-00シーズンのカイザースラウテルンでプロデビューした稀代のストライカーは、5年間を過ごしたラツィオを昨シーズン限りで退団。所属クラブのないフリーの大物として、身の振り方がおおいに注目されていた。
 
 ラツィオ退団後に浮上した古巣ブレーメンへの復帰説はすぐに消滅した。同クラブのスポーツディレクターで、現役時代にクローゼとチームメイトだった経験もあるフランク・バウマンが10シーズンぶりとなる復帰を否定したからだ。
 
 ブレーメン・ファンの中には「ヤツはユダだ」と、いまだに07年夏のバイエルン移籍を根に持っている者も少なくなく、巷からも復帰を後押しするような声は聞こえてこなかった。
 
 むしろ根強く残っていたのはMLS(アメリカ)や中国リーグなど欧州外への移籍の噂。本人はラツィオ退団間際に「代理人に届いているオファーを吟味したい」と口にしていた。
 
 昨シーズンの時点で新天地候補に挙がったクラブを整理すれば、スティーブン・ジェラード擁するLAギャラクシー、飲料メーカー『レッドブル』がオーナーのNYレッドブルズ、元ドイツ代表のDFアーネ・フリードリヒを獲得した経験を持つシカゴ・ファイアーなどだ。
 
 そのMLS行きの噂をかき消すかのようなビッグニュースが発信されたのは今年6月だった。中国メディアが「中国のクラブが年俸1800万ユーロ(約21億円)の2年契約を準備」と報じたのだ。その6月に38歳になったFWへのオファーとしては破格であり、ドイツでもイタリアでもクローゼがアジアでプレーする可能性が取り沙汰された。
 
 しかし、4度のワールドカップ出場で計16ゴールと、大会通算得点記録を塗り替えたレジェンドは結局、履歴書に新たなクラブ名を書き込まなかった。
 
 セリエAより明らかにレベルが劣るうえ、母国ドイツから遠く離れた異国リーグでの"年金生活"に前向きになれなかったのだろう。カネに心を動かされることは決してなかった。

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