【英国人記者の視点】川崎に見る“パスだけのサッカー”の限界。現状は2、3年前のアーセナルで、目指すべきはバルサだ

2016年10月31日 スティーブ・マッケンジー

中村が司った川崎のパステンポ。

川崎の中心にいる中村憲剛。「優勝したい。今年ほどそう思うことはない」と口にし、最終節に並々ならぬ闘志を注いでいる。 (C) SOCCER DIGEST

 久々に来日した私は10月29日、鹿島アントラーズ対川崎フロンターレ戦を観に鹿島まで足を運んだ。とくに「志向している攻撃的なスタイルが素晴らしい」と聞いていたので、川崎には高い関心があった。
 
 私は彼らがパスサッカーを好み、見る者を失望させないと聞いていたが、ウォームアップの時点でそれが嘘でないことが分かった。
 
 ウォームアップで見られたのは、少人数での目の回るような素早いパス回しだ。このパス回しにはGKも交じっていたが、何一つ違和感なくこなしていたのをよく覚えている。
 
 川崎の選手たちはキックオフと同時にギアを入れ、5メートル間隔のパスを6本連続で繋ぎ、鹿島からFKを獲得した。この直後もショートパスを繋いだ川崎のそれは、テレビゲームを見ているかのようだった。
 
 この川崎のスタイルの中心に、中村憲剛と大久保嘉人の経験豊富な2人の存在があることはすぐに感じ取れた。
 
 とくに中村は攻守の両面で軸となり、川崎のパスゲームのテンポを司っていた。
 
 彼から生み出されるすべてのパスが結果に結びつくわけではなかったが、ほとんどの川崎サポーターが、そのパスワークに大きな期待を寄せているのは、会場の雰囲気からも受け取れた。実際、彼のビルドアップが起点となって、65分の森本貴幸の決勝ゴールは生まれた。
 

次ページ「2、3シーズン前のアーセナルを想起」させた現在の川崎が目指すべきはバルサだ!

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事