【コラム】絶好調ウォルコットは本当に全面開花したのか? アーセナル覇権奪回の鍵

2016年10月26日 松澤浩三

クラブでも代表チームでも期待を裏切り続けてきたが…。

今シーズンはここまでアーセナルのチーム得点王。ウォルコットがついに開花か?(C)Getty Images

 セオ・ウォルコットが絶好調だ。今シーズンはここまでプレミアリーグとチャンピオンズ・リーグで計11試合に出場して8ゴール・2アシスト。とりわけ直近7試合は7ゴール・1アシストとスーパーな活躍ぶりだ。
 
 昨シーズンの年間成績(33試合で7ゴール・4アシスト)と比較すれば、今シーズンの好調ぶりが容易に伺える。10年前から注目を集めてきた未完の大器が、ついに本領を発揮する時が訪れたのかもしれない。
 
 16歳でプロデビューするなど"ワンダーボーイ"と囃し立てられ、2006年1月にはサウサンプトンからアーセナルへと移籍。さらに、17歳になった同年の夏には、スベン・ゴラン・エリクソン監督(当時)の鶴の一声によりドイツ・ワールドカップのイングランド代表メンバーにもサプライズ招集されたのである。
 
 当時2部だったサウサンプトン時代にはトップチーム出場経験があったとはいえ、アーセナルではまだデビューも飾っていない存在。そんな"少年"が大抜擢されたのだ。マスコミやファンの脚光を浴び、大会直前の強化試合(ハンガリー戦)では17歳75日で同国最年少デビューを飾った。
 
 しかし、ワールドカップでウォルコットには一度として出場機会が訪れなかった。そのうえチームは決定力不足が原因で準々決勝敗退を喫して、エリクソン監督が大きな批判を浴びたのは言うまでもない。
 
 以来、厳しい言い方をすれば、ウォルコットはクラブでも代表チームでも期待を裏切り続けてきた。爆発的なスピードを備えていたが、「技術がない」、「サッカーIQに乏しい」などと揶揄され、アーセナルとイングランド代表のどちらでも不動の存在になれないまま時は流れていった。そしていつの間にか、27歳になっていた。
 
 本人はウイングではなく「CFでプレーしたい」とずっと主張し、アーセン・ヴェンゲル監督もこれまでウォルコットにチャンスを与え続け、近年はCFとして起用する機会もあった。
 
 しかし、決定力不足は顕著だった。プレミアリーグで二桁得点を達成したのは12-13シーズンの一度のみ。トップチームに定着した06-07シーズンから昨シーズンまで、10年間の年間平均ゴール数は5.5。アーセナル・ファンやイングランド・サポーターでなくても、物足りなさを感じずにはいられないだろう。

次ページ“良い意味で力を抜くこと”を覚えた。

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