バテバテの本田を残した意図とは? 消極的な交代策に見えたハリルの思考

2016年10月12日 五十嵐創(サッカーダイジェストWEB)

ハリルが何より優先したのは、オーストラリアのセットプレー対策。

CFで起用された本田。後半は明らかにスタミナ切れだったが、ハリルホジッチ監督は84分までピッチに残した。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 [ロシアワールドカップ・アジア最終予選]オーストラリア 1–1 日本/10月11日/ドッグランズスタジアム

 オーストラリア戦の戦いぶりは、不甲斐ないというほかなかった。
 
 開始5分に先制し、組織的な守備で相手に隙を与えなかった前半は良い。しかし、52分にPKで失点した後の38分間は、べタ引きになってサンドバック状態。オーストラリアの稚拙な攻撃に助けられただけで、2点目を奪われないのが不思議なほどだった。
 
 なぜ、日本は反撃できなかったのか。これはハリルホジッチ監督の判断によるところが大きい。指揮官の消極的な姿勢が、チームから攻撃の手段を奪っていたからだ。
 
 後半途中から、明らかに前線の本田と香川の運動量は落ちていた。そのため、前半のような高い位置からのプレスが不可能になり、それにともなって最終ラインがズルズルと下がった。日本が相手の攻撃を撥ね返していたのは、ほとんどがペナルティエリア付近。ボールを良い形で奪える場面はなく、なおかつ前線のふたりが疲労してカウンターも出せなかった。
 
 そうした展開であれば、指揮官が何かしら相手を押し返す策を打つのが普通だ。
  
 例えば、失点後の早い段階で指揮官がフレッシュな選手を投入し、前線を活性化していたらどうだったか。
 
 スピードのある浅野を入れて相手最終ラインの裏を突かせたり、イラク戦でパスの供給源になった清武を入れてカウンターを狙えば、オーストラリアも失点を恐れて無暗に前に出てこられなくなる。少なくとも、あれほど押し込まれる展開にはなかっただろう。
 
 しかし、ハリルホジッチ監督は81分まで動かなかった。普段であれば60~70分頃に交代の札を切る指揮官が、失点から約30分間も手をこまねいて見ていたのである。その真意は、以下のとおりだ。
 
「オーストラリアはCKかFKでしか点を取れないので、その管理をするために本田と小林を残していました。彼らには、セットプレーに対しての本当に正確な役割を与えていました。もしかしたら、フレッシュな選手を入れるべきだったかもしれませんが、危険なのは本当にFKだけでしたからね」
 
 つまり、疲労が顕著な本田や小林を代えなかったのは、『失点を防ぐ』ため。カウンターでゴールを狙うよりも、セットプレー対策を優先したということだ。

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