【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の九十二「ハリルホジッチ監督の『修正能力』の程をオーストラリア戦で見極めよ!」

2016年10月11日 小宮良之

「得点率をもっと高めたい」というコメントの方が本音だろう。

結果的には自身の采配によって劇的に勝点3を手に入れたかたちとなったハリルホジッチ監督だが、その投入の意図には疑問符が付いた。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 ロシア・ワールドカップのアジア最終予選、イラク戦で負けたら、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のクビは飛んでいただろう。
 
 後半アディショナルタイム、山口蛍の決勝点は値千金だった。どうにか、戦いを次に繋げられたからだ。
 
 しかし、試合内容はお粗末で、評価できるポイントは少なかった。
 
「このチームの強みは、多くの選手が点を取っていること」
 
 そう語るハリルホジッチは、山口が得点を決めたことに胸を張ったが、「得点率をもっと高めたい。なぜなら、いつもいつも10回も決定機を作れないからね」というコメントの方が本音だろう。
 
 イラク戦でも、幾度もあった好機をなかなか決めきれなかった。右サイドの本田圭佑は抜け目なくシュートポジションに入ったが、ゴールネットを揺らせていない。ここ数試合のデジャブーを見せられるような展開だった。
 
「審判が日本を助けた」とイラクの監督は不満を示したが、確かに先制点は本田のパスがオフサイドだった疑いがあるし、2点目の場面でも、イラクは怪我人を戻す許可が与えられず、アディショナルタイムも6分と長かった。
 
 ハリルホジッチはUAE戦で、ジャッジによって負けた、と何度も繰り返していたが、このイラク戦ではジャッジで勝ったに等しい。つまり、ジャッジも含めての勝敗と言えるのだ。
 
 そんなことよりも、ディテールを掘り下げることの方が重要である。
 
 例えば、セットプレーからの失点が続くディフェンスの問題は、まったく改善されていない。
 
「セットプレーで失点の気配が漂っている。ディフェンスに大きな問題を抱えているのは間違いない」
 
 そう解説したのは、『「戦術」への挑戦状 フットボールなで斬り論』(東邦出版)の共著者で、ワールドサッカーダイジェストの連載を長年にわたって続けているヘスス・スアレス氏だ。
 
「セットプレーでの、てこ入れが必要だろう。イラク戦では、失点の時だけでなく、相手の21番(サード・アブドゥルアミール)に競り負け、ポストにヘディングシュートを当てられていた。日本には高さが足りない」
 
「両ゴールポストにディフェンダーを入れ、GKが積極的に空中戦に対応し、ひとりがそこをカバーするのは、ひとつの手かもしれない。あるいは、マンツーマンでは手が足りないのでゾーンにするとか」
 
「良いボールが入ると、苦しい場所が出てくる。今のままでは、失点を繰り返すだけだろう」

次ページデュエルが弱い。……――そんな分析なら、素人でもできる。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事