【リーガ・エスパニョーラ移籍市場総括】各クラブが身の丈に合った補強を展開した今夏

2016年09月02日 下村正幸

リーガとCLの二足のわらじを履くチームは陣容の底上げに着手。

左からA・ゴメス、ディーニュ、ウンティティ、ひとりとばしてD・スアレス。バルサは的確な補強を展開したが、一方でマシア育ちが多く離脱した。サンペール(右から2人目)もグラナダへ。 (C) Getty Images

 長年にわたってメルカート(移籍市場)を引っ張ってきたリーガ・エスパニョーラの「ビッグ2」は、対照的な動きを見せた。
 
 バルセロナは、勝負どころの終盤戦で主力の多くがガス欠を起こした昨シーズンの教訓を踏まえ、若く有能なバックアッパーを大量補強。その一方で、数多くのマシア(下部組織)出身の若手が退団した。
 
 実質的にパコ・アルカセルの交換要員としてバレンシアに移籍したムニル・エル・ハッダディがその好例で、現地では、マシア至上主義はすでに過去のものと見る向きも少なくない。
 
 翻って、「これ以上チームを良くすることは不可能」とフロレンティーノ・ペレス会長が語ったように、現有戦力に自信を覗かせるレアル・マドリーは、恒例の"ガラクティコ"補強を見送り、新戦力は出戻りのマルコ・アセンシオとアルバロ・モラタに止まった。
 
 今年1月のジネディーヌ・ジダン監督就任を境に、ダニエル・カルバハル、ルーカス・バスケスといった国産選手が存在感を高めていた流れに、さらに拍車をかけた格好だ。
 
 即戦力重視の補強で、同じく選手層の強化を図ったアトレティコ・マドリーを含め、こうしたビッグクラブのメルカートでの動きは、リーガとチャンピオンズ・リーグ(CL)の二足のわらじを履くには、もはやレギュラーだけでなく、陣容全体の底上げが不可欠であることを如実に示していると言える。
 
 そのバルサとA・マドリーに、セビージャとビジャレアルを加えた4クラブの補強総額がリーガ全体の半分以上を占めるという結果になったが、決して無駄遣いをしたわけではない。
 
 例えば、大型投資に踏み切った印象が強いバルサも、6000万ユーロという毎年設定している予算の範囲内で補強を行なっている。
 
 今夏も含めた過去3年の補強総額は、順に1億6672万ユーロ、5100万ユーロ、1億2280万ユーロ。一方、選手売却で得た移籍金総額は、7880万ユーロ、4700万ユーロ、3160万ユーロである。
 
 それぞれの差額は、8792万ユーロ、400万ユーロ、9120万ユーロで、合計が1億8312万ユーロとなり、3年で割るとほぼ6000万ユーロの支出になる。
 
 A・マドリー、セビージャ、ビジャレアルの3クラブも、選手売却で得た移籍金を元手に、それぞれ身の丈に合った補強を展開している。

次ページバレンシアに見る、外国人オーナーによる買収で生じるリスク。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事