親目線の育成論――幼少期の小林祐希と接して分かったこと

2016年08月24日 加部 究

U-23日本代表の選手たちはボールと遊んだ時間が足りていない?

今夏からオランダ1部のヘーレンフェーンに移籍する小林。A代表では、まずはメンバー定着を狙う。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 かつてお父さんコーチとして小林祐希と接し、実子がプロ経験者というスポーツライターの加部究氏は、「プロフットボーラーの育て方」をどう考えているのか。実体験を基に、親目線から独自の見解を示してもらった。
(※『サッカーダイジェスト』2016年8月25日号より転載)
 
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 先日ミランサッカースクール千葉・佐倉校で指導を続けているルカ・モネーゼ氏に話を聞く機会があった。日本滞在が4年以上になるので、さすがに日本の育成事情についての見解が実に的を射ていた。
 
「幼稚園までは日本の子もイタリアの子と変わりません。でも小学校に入ると途端にチャレンジをしなくなる。イタリアでは、まだこの年代の子どもたちは、興味を持った難しい技などに挑戦するばかりなのに……」
 
 日本の子どもたちは、チームとして試合をするようになると、コーチの顔色を見て怒られないプレーを優先するようになるのだという。これは「フットボール批評」の取材だったのだが、ちょうど同誌では同じくイタリア人の指導者フランチェスコ・マクリ氏が、U-23日本代表の試合を見て、こんな指摘をしていた。
 
「日本の選手たちは、ボールと一緒に遊んだ時間が足りていないのではないか。日本の若い選手たちが今よりもっと楽しく遊べるようになればプレーの質も変わってくるはずだ」
 
 楽しんでチャレンジしないからアイデアが枯渇し、駆け引きも身に付かないというのだ。同氏は、こんな言葉で原稿を結んでいる。
 
「ディエゴ・マラドーナの言葉を借りるまでもなく、より多くボールと戯れた者が上手くなる。決して走り込みの距離に勝る者ではない」
 
 ふたりのイタリア人が、別々の年代を見て、日本の実情に同じ印象を抱いていたわけだ。
 

次ページ祐希は少し刺激するだけで次々にアイデアが溢れてきた。

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