【連載】霊長類ヒト科サポーター図鑑vol.13菅原賢史(サガン鳥栖サポーター) 「アウェーサポーターにも『また来たい』と思ってもらいたい」

2016年07月30日 宇都宮徹壱

「僧侶だからできるサポート活動」を考える。

僧侶をしながら鳥栖を応援し続ける菅原さん。ある独自の活動を続けている。写真:宇都宮徹壱

菅原賢史(サガン鳥栖サポーター)
 
 本業はお寺の僧侶です。宗派は浄土真宗で、僧侶でも肉食妻帯が許されています。山にこもって修行するのではなく、俗世間で教えを説くというのが(宗祖の)親鸞上人の教えなんです。
 
 私もよくサポ仲間から"なまぐさ"と言われるんですが(笑)、誘惑の多い俗世間において自分の姿勢や言動というものに説得力がないと僧侶として生きてはいけません。その意味で、人間性が問われる宗派だと思っています。
 
 試合がある土日は、やっぱり法事が多いですね。できるだけ試合時間に被らないように調整はしていますが(笑)、余裕をもってスタンドに行くというのはあまりないです。ですので、事前に指定席を購入して、ぎりぎりでも入場できるようにしています。
 
 その一方で「僧侶だからできるサポート活動」ということを自分なりに考えていたんです。そこで導き出されたのが、「鳥栖に来たアウェーのサポーターに宿を提供すること」でした。
 
 きっかけは5年前の11月、ホームで柏戦があったんです。たまたま早朝にスタジアムの前を歩いていたら、柏のサポーターが席取りのために野宿していたんですよね。せっかく鳥栖まで来てくれたのに、こんな寒いところで前日から野宿していることを知って、ものすごくショックを受けたんですよ。「せめて、温かい場所で寝泊まりさせてあげられないだろうか」──そう家族と相談し、次のシーズンからアウェーのサポーターに無償で宿を提供する活動を始めました。
 
 仏教には「無財の七施(むざいのしちせ)」という教えがあります。そのひとつが、宿がない人に自分の家を提供する「房舎施(ぼうじゃせ)」という施しなんです。
 
 つまり、僕の活動は仏の教えに則ったものであり、同時にサポーターとしての活動でもあるんですね。遠くから鳥栖に来ていただいたんだから、福岡でなくこっちに泊まってほしいし、浮いたお金で美味しいものも食べてほしい。まあ、寝るのは雑魚寝ですが布団もありますし、お風呂はひとつしかないので男女のお客さんがいる時は譲り合っていただきます。母親が朝ごはんを作ってくれることもありますよ(笑)。今では口コミで広がって、けっこうリピーターも増えましたね。
 

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