新シーズンへ中村憲剛が“FRO”として契約更新した理由。重視した変革期を迎えたフロンターレへの想い【コラム/蹴球賢語】

2025年02月20日 本田健介(サッカーダイジェスト)

川崎が変わる今だからこそ

今季もFROの役職で川崎を支える。森谷賢太郎(写真右)が今季から強化部スタッフとして復帰するなどクラブには多くのOBが。(C)SOCCER DIGEST

 サッカーダイジェストで毎号連載中の中村憲剛氏のコラム「蹴球賢語」を今回はWEB版として紹介。2025年への想いを語ってもらった。
 
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 コラムの掲載が少し空いてしまいましたが、今回は"特別版"としてWEBでご紹介させていただきます。
 
 さて2025年のJリーグもいよいよ開幕しましたね。今年は秋春制移行前の最後のシーズン。神戸の3連覇なのか、はたまた他のチームが覇権を奪回するのか、熱い魅力的な試合が展開されることを願っています。
 
 そして、私、中村憲剛の2025年と言えば、川崎フロンターレと「Frontale Relations Organizer(FRO/フロンターレ リレーションズ オーガナイザー)」の契約を更新させていただきました。この役職に就いて5年目。引き続き、クラブのためにできることを全力でやっていきたいと思います。
 
 ただ、皆さんご存知の通り、今年、川崎は大きな変革期を迎えました。8年指揮を執ったオニさん(鬼木達監督)が退任され、シゲさん(長谷部茂利監督)が新たに就任されて、コーチングスタッフの顔ぶれも変更。アカデミーに携わっていたヤスさん(長橋康弘/前U-18監督)、佐原さん(佐原秀樹/前U-18コーチ)、勇樹(吉田勇樹/前U-15等々力コーチ)がトップチームのスタッフに加わりました。
 
 僕は昨年まで主にアカデミーに関わる立場でした。その理由として、トップを率いているのが僕も現役時代に指導してもらったオニさんであり、トップに人材を送るために、アカデミーの選手たちに何を伝えるべきかを把握できていたからこそです。だからこそ、僕自身トップとアカデミーをそこまで行き来せずとも、クラブとして目指しているスタイルを理解できていました。
 
 ただ今年から前述したようにヤスさんらがトップに行き、(森)勇介がU-18の監督に就任するなど、少なくない入れ替えがありました。さらにトップの監督のシゲさんがどのようなサッカーを志向するのか、みんなで共有する必要があるなと考えました。
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 そんな大事なクラブの転換期になる今年、僕はどちらかに偏った関わりというよりもトップとアカデミーどちらにも携わり、橋渡し役となるためにクラブと相談して、5年目のFROの内容を変更し務めさせていただくことを決めました。
 
 僕がトップのコーチに加わる形もあったと思います。ただ、そうした場合トップとアカデミーをつなぐ人間が限られるのではないかという懸念もありました。そうであれば、しっかりした肩書きを持った自分が、クラブの未来のためにトップとアカデミーをつなぐ役割を担いたいという想いが生まれたんです。

 その選択を決断した理由のひとつとして、シゲさんは中央大学サッカー部の先輩にあたり、(森)勇介は同い年で長い間チームメイトでもあったので、ふたりとしっかりコミュニケーションを取れるベースが僕にはありましたし、どちらも始動から約1か月経ちましたが、ふたりともしっかりと話をできているのでありがたいです。
 
 僕としても"フロンターレとは"というクラブのアイデンティティをもちろん大切にしていますが、それを押し付ける気はありませんし、僕自身もシゲさんのスタイルを学び、理解を進めながら選手たちが体現できるようにサポートをしたいですし、そこにフロンターレが培ってきた強みを上手くミックスして新しいフロンターレのスタイルを構築できるサポートができればと考えています。シゲさんもフロンターレのスタイルをリスペクトしてくれていますし、ACLEの浦項戦(○4-0)、開幕したJリーグの名古屋戦(○4-0)を見てもこれ以上ない形で調和は進んでいると感じています。
 
 ですので、FRO5年目にして、「トップとアカデミーをつなぐ」というこれまで以上の大役を担っていると実感する日々となっています。

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